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おもに少年愛と小説に関する雑記。エッセイとコラム
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子ども部屋3
 少年の両肩を後ろから軽く押して、ゆっくりとバスルームに導いた。小さな肩が少し震えているようだ。これだけ濡れれば、この季節でも、運動をやめたとたんに体が急に冷えてくるのも無理はない。ウィンドブレーカーの下はプリントのシャツ一枚で、汗と湿気と入りこんだ雨で、何のための合羽やら、ずっしり水分を含んで体に貼りついて、俺にとってはこれはもうエロス以外の何ものでもないのだった。太ってはいないのに腹部のラインはわずかに膨らみを帯び、骨格は思いがけぬほど華奢で、俺の当初の彼の年齢についての見立ては、誤りかも知れないと思った。
 脱衣篭を跨いでバスタオルを取ろうとするので、
 「そんな濡れた服のまま頭だけ拭いてもしゃあないわ。服洗濯機に突っ込んでシャワー浴びい」
 と水を向けた。
 「別に洗わんでも……」
 「さっと水ですすいで脱水するだけや。知らんか? 雨水てめちゃめちゃ汚いねんど」
 ふうん、と漏らすと、少年はためらいもなくシャツに手をかけ、脱いだ服をポイポイと洗濯機に放り込んで全裸になった。その上また、すっ裸で俺を見上げて真っ白の歯並びの悪い歯をむき出してにっと笑ったのだ。俺は、認め難いがたじろいだ。ベタベタと体に貼りついていた着衣を脱ぎ捨てて気持がいい、という意思表示だったようだが……。
 暗めの照明の下でも、全身やはり病的なまでの白さだ。血流がそれを、かすかに朱にそめているのだ。剥きたての白桃の果実のようだ……。そしてやはり、まだ完全な幼児体型だった。思春期や二次性徴や力強い骨格は、まだ一切の主張を始めていなかった。湿ったパンツに収まっていた小さなペニスはしおれていたが、皮は手で剥けそうだった。
 バスルームに少年を押し込み、洗濯機の中のブリーフを何となくつまみ上げて、マジックで名前が書いてあるのが妙にかわいくて笑ってしまった。もっとも、文字は擦れて、いくつかしか判読できなかった。
 水音がしてすぐ、「つべた!」という叫びがガラスの向こうから聞こえ、俺は目尻が下がって笑みが浮かぶのを抑えきれなかった。
 「アホやな。じきに熱なるわ。手で確かめながら温度調節すんにゃ。そうせんと今度はやけどするど」
 俺の大声に対し、はーい、とエコーのかかったボーイ・ソプラノが返ってきた。
 今日の俺は優し過ぎるかも知れない。誤解をおそれずに言うなら、この優しさは決して、芝居ではない。これから何が起こり、俺が如何に変貌しようとも、それもまた俺、今の俺も、偽らざる俺という人間だ。

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