×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
小さなからだからすれば二食分ほどもたいらげて、その後昌巳はこんこんと眠った。
翌朝、目覚めた時、また金はいなかった。昌巳はもぞもぞと足を動かしてみた。普通に歩けそうだ。若いいのちのエネルギーが吸い寄せられるように、昌巳のからだに戻りつつあった。
布団の足下あたりにあったズボンを穿いて、昌巳は戸外に出る。空気はやはり、自分には冷たい気がした。コンクリートの階段を降り、診療所のドアを叩いた。
「開いてるよ」
素っ気ない返事が終わるか終わらないかに、昌巳はドアを開いていた。
「おう、ちょうどよかったぜ、横になれ」
「もう大丈夫やて」
「アホか。医者の俺がまだだめだって言ってるんだよ。黴菌がまた増えだしたら元も子もないし、外側の炎症の具合も、まだみていかにゃならん」
昌巳は黙って診察台に横になった。金は言葉もかけず無造作に昌巳の下半身を裸にした。消毒液を浸したガーゼを陰部に当てると、昌巳は思わず身を縮める。
「冷たいわ……」
昨日は元気がなく、黙って処置されていた昌巳だったが、今日は恥ずかしさもあってかよく喋った。
「しげしげ見んといてくれ。ちょっとそここそばい……て」
昌巳は身を捩るが、金は遠慮無く「処置」を続けながら言った。
「ここに膿が貯まるんだよ。決してエロい意図はない。必ずない。しかし見事にきれいになってるな。外用薬はいらない。風呂かシャワーできれいにするのが一番だ。シャワーは何とかなる、だろ」
返事はすぐに返ってこない。昌巳の表情にかすかな翳りを見た気がした。金は何か雰囲気を変えるジョークの一つも飛ばそうと思ったが、何も出なかった。沈黙を破り、先に口を開いたのは昌巳だった。
「しかしホンマ、先生変わっとるな」
「そう言われたのは初めてじゃないが、なぜだ?」
「一銭にもならんのに……。普段俺だけ違ごて、誰にもチップ百円でもやったことないやろ。ドケチのおっさんや思てたのに」
金はガーゼを置いた。
「勘違いするなよ。俺は慈善事業に興味はねえ。からだで払ってもらうと言ったろ? 仕事なのさ。ちゃんと考えてるぜ。それからチップなんてな。俺はな、ここに暮らしてるんだ。ショートステイの旅行者じゃない。毎日会うガキどもに百円だろうが二百円だろうがいちいちチップをやってたら、俺のジンセイのマネープランが台無しになるじゃねえか」
興奮した強い調子は、やはり途中からいつもの軽さに戻っていた。
「マネープランて、そんなもんとっくに狂ってしもたから、こんなボロ病院やってんのとちゃうんかいな」
まともなことを言おうとすると、どうしても口下手である自分をわかっている昌巳は、それでも思い切ってまじめな話をしようと思っていて、また軽くいなされたので、やはりいつもの生意気な悪態をついたのだが、意外にもさっと金の顔がこわばった。
「……触れてはならない部分に触れたな」
金はデスクのペン立てのような器具入れから、先の鋭利な医療用の鋏を抜き取った。
「やはりここは切断することにする」
目指すのは昌巳の性器だった。
「ちょっと、おっさん! アホか! やめろ、ええ加減にせえて!」
細長い診療台から、昌巳の体が転落した。
翌朝、目覚めた時、また金はいなかった。昌巳はもぞもぞと足を動かしてみた。普通に歩けそうだ。若いいのちのエネルギーが吸い寄せられるように、昌巳のからだに戻りつつあった。
布団の足下あたりにあったズボンを穿いて、昌巳は戸外に出る。空気はやはり、自分には冷たい気がした。コンクリートの階段を降り、診療所のドアを叩いた。
「開いてるよ」
素っ気ない返事が終わるか終わらないかに、昌巳はドアを開いていた。
「おう、ちょうどよかったぜ、横になれ」
「もう大丈夫やて」
「アホか。医者の俺がまだだめだって言ってるんだよ。黴菌がまた増えだしたら元も子もないし、外側の炎症の具合も、まだみていかにゃならん」
昌巳は黙って診察台に横になった。金は言葉もかけず無造作に昌巳の下半身を裸にした。消毒液を浸したガーゼを陰部に当てると、昌巳は思わず身を縮める。
「冷たいわ……」
昨日は元気がなく、黙って処置されていた昌巳だったが、今日は恥ずかしさもあってかよく喋った。
「しげしげ見んといてくれ。ちょっとそここそばい……て」
昌巳は身を捩るが、金は遠慮無く「処置」を続けながら言った。
「ここに膿が貯まるんだよ。決してエロい意図はない。必ずない。しかし見事にきれいになってるな。外用薬はいらない。風呂かシャワーできれいにするのが一番だ。シャワーは何とかなる、だろ」
返事はすぐに返ってこない。昌巳の表情にかすかな翳りを見た気がした。金は何か雰囲気を変えるジョークの一つも飛ばそうと思ったが、何も出なかった。沈黙を破り、先に口を開いたのは昌巳だった。
「しかしホンマ、先生変わっとるな」
「そう言われたのは初めてじゃないが、なぜだ?」
「一銭にもならんのに……。普段俺だけ違ごて、誰にもチップ百円でもやったことないやろ。ドケチのおっさんや思てたのに」
金はガーゼを置いた。
「勘違いするなよ。俺は慈善事業に興味はねえ。からだで払ってもらうと言ったろ? 仕事なのさ。ちゃんと考えてるぜ。それからチップなんてな。俺はな、ここに暮らしてるんだ。ショートステイの旅行者じゃない。毎日会うガキどもに百円だろうが二百円だろうがいちいちチップをやってたら、俺のジンセイのマネープランが台無しになるじゃねえか」
興奮した強い調子は、やはり途中からいつもの軽さに戻っていた。
「マネープランて、そんなもんとっくに狂ってしもたから、こんなボロ病院やってんのとちゃうんかいな」
まともなことを言おうとすると、どうしても口下手である自分をわかっている昌巳は、それでも思い切ってまじめな話をしようと思っていて、また軽くいなされたので、やはりいつもの生意気な悪態をついたのだが、意外にもさっと金の顔がこわばった。
「……触れてはならない部分に触れたな」
金はデスクのペン立てのような器具入れから、先の鋭利な医療用の鋏を抜き取った。
「やはりここは切断することにする」
目指すのは昌巳の性器だった。
「ちょっと、おっさん! アホか! やめろ、ええ加減にせえて!」
細長い診療台から、昌巳の体が転落した。
PR