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おもに少年愛と小説に関する雑記。エッセイとコラム
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僕は知っている

第一章 僕と電話の少年
 
 居間に置いてある電話が鳴ったとき、僕は遅い昼飯にとインスタントラーメンにネギを加えて鍋で煮込んでいるところだった。仕上がり寸前に卵を入れれば完成、というところで、僕は麺の硬さを確かめていた。このままこの場を離れてしまったら、確実に麺は煮込みすぎになってしまうだろう。

 でも僕は、電話を取りに行った。それは仕事の電話かもしれなかったからだ。

 僕は三十七歳で、肩書きは漫画家。だけど実際は求職中で、どちらかと言えばひまな毎日だ。漫画の仕事は時々しか来ない。年下の漫画家の下でアシスタントなんかもやっていたこともあるけれど、最近体力が続かなくて辞めた。失業保険はあと二ヶ月ほど残っているけれど、蓄えはほとんどない。僕の未来とやらの見通しは、決して明るいとは言えなかった。

 たまの仕事の依頼に、アポなしで編集者がうちにやって来ることなどまずない。僕は現在一人のアシスタントも雇っておらず(雇える状況にあらず)、ひとり暮らしで家にいるものかいないものか、あらかじめわかるはずがなかったからだ。

 七回ほどベルを鳴らして、僕は電話を取った。
「もしもし、黒崎先生?」
 僕はがっかりして、続いて少し戸惑った。電話の声が、思春期寸前の、ちょっと掠れた男の子独特のボイスだったからだ。その声は僕の欲望をくすぐるに十分な魅力を備えていたが、同時に仕事の電話ではないことははっきりしていた。
 間違い電話に決まっている。僕には何人かの少年の知り合いがいたが、電話なんてまずかけてこないし、その子たちは僕を黒崎とは呼ばない。なぜなら僕はペンネームを「黒崎カラス」といい、本名はそれとは縁もゆかりもない平凡な名前で、少年たちが知っているのはそっちの方の名前だからだ。それに知り合いの声は、いくら年頃が近い少年だろうと、たぶん区別がつく。
「もしもし、僕は確かに黒崎ですが、そちらはどちら様でしょうか」
 相手から名乗る様子がないので、僕は相手が子どもだろうと、いちおう慇懃に名前を訊ねてみる。
「僕が誰か、わからないの?」
 馴れ馴れしい口調だ。僕は一応考えてみる。しかしやはり思い当たらない。誰かいたずらを仕掛けそうな知り合いの少年を思い浮かべてみるが、どうも違うように思える。それにこれが何かのいたずらになっているだろうか。
「わからない。ねえ、申し訳ないけど僕は今……」
「先生には僕がわからない。でも僕には先生のことがわかる」
 僕は思わず受話器を耳から離して気味の悪い虫でも見るように見つめ、もう一度耳に受話器を当てた。
「僕を知ってるっていうのか。僕の何を」
「現在三十七歳と二ヶ月。平成三年、少文館漫画賞受賞の、プロの漫画家」
 三十七歳と二ヶ月? 僕は顔をしかめてもう一度受話器を見た。そして再びそれを耳に当てる。
「君の言うとおりだがずいぶんそれは古い話だ。君の声はどう聞いても小学生に聞こえるけど、君はその僕に一体なんの用事があるっていうんだい?」
 僕は腹立ちよりも不気味さを感じてきていた。
「用事? まず何よりも、僕は先生に僕を思い出してほしいんだけど」
 ここに至って僕は完全に言葉を失った。
「大切なお昼ご飯が台無しになっちゃうよ」
 それだけ言い残して電話は切れた。


第二章 友也と唐川

(中略)
 
 唐川青年と友也というその少年の最初の出会いは、そのダイヤルQ2を介してもたらされた。ツーショットダイヤルにも、同性愛には同性愛の、少年少女には少年少女の符牒があった。後に携帯電話のネットサービスなどで流行した出会い掲示板などにも、そうしたものがあった。そして今後も、姿を変え形を変え、そうした闇の符牒は生き残っていくのだ。

 JRの某駅東口で、彼らは待ち合わせたが、唐川は友也をなかなか見つけられなかった。関東圏で阪神タイガースの帽子という比較的わかりやすい目印があったにも関わらず、だ。それは、十四歳と名乗った友也の外見が、あまりにも幼かったからである。
 彼は夏場でも赤くしか陽焼けしないタイプの色白で丸顔で、ほんのりと頬が赤く、ぱっちりとした目をしていた。丸顔が好みならば美少年という表現もあたらなくはない整った顔立ちだが、例えば一般的な大人の女性から見れば、むしろ「かわいらしい」タイプだろう。からだを形作る曲線は柔らかく、幼く、痩せても太ってもいない。ただその体格も身長も顔つきも、小学校高学年くらいにしか見えない。どう上に見積もっても十二歳の中一、というところだった。

 一方唐川は、「ルパン三世みたいな真っ赤なジャケットと、サングラス」を目印にしていた。必然的に、友也少年の方が先に、唐川を見つけ、こわごわ、声をかけてきた。
「おじさん?」
 帽子のつばの影の奥から、ぱっちりとした潤んだような瞳が、見上げていた。
「君が? 友也君?」
 思春期前の少年独特の、かすかに掠れた声を聞き、友也の姿を見て、唐川は相当驚いた。
「十四歳のS区の友也君?」
 少年は黙ってうなずいた。

(中略)

「で、これからやることはわかってるんだよね?」

(中略)

「先にシャワーを浴びなよ」
 ちょっと間があった。
「……あの、僕いいです」
 汗はすっかり引いてしまったし、とでも言いたげだ。
「いいから入んな。物事には手順ってものがあるんだからさ」
 アナルセックスもやるし、フェラチオもやる。つもりだ。汗臭いセックスも時にはいいが、この子とやりたいのはそういう感じじゃない。
 唐川はいつになく穏やかに言ったつもりだったが、少年はだいぶ怯えてしまったようだ。
「……やっぱり初めてなのか?」

(中略)

 少年のからだを回転させ、唐川はしゃがみ、顔に顔を寄せて、くんくんと匂いを嗅いだ。少年の髪はさらさらとして、ちょっと伸びすぎで、眉にかかって、シャンプーの匂いがした。育ちのよさそうな少年に見える(というより、感じられる)。こんな場所は、いかにも不釣り合いだった。

 唐川は少年の性器を見た。仮性包茎の性器だ。勃起したら、中身がちょっとのぞきそうなくらいの、未成熟な性器だ。唐川はそれを下から撫でるように、ちょっと手を触れた。少年が思わず腰を引いた。唐川は性欲の疼きを覚えた。ズボンの中で性器が反応している。
 唐川は腰を引いた少年のちょっとした隙をついて、おもむろに唇を奪った。
「ん、む……」
 間近に見える少年の大きな潤んだ瞳からは、涙がこぼれそうだ。


 サンプルファイルはもう少し長さがあります。ストーリーの切れ味もエロの濃厚さも、自信作ですので、作風がフィーリングに合いそうな方は、まずサンプルファイルだけでもご覧いただきたいです。

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 デジケットは審査中です。

追記:審査通過しました。速い!
[夢幻童] の【僕は知っている】

 なお、携帯用のe-book、課金ブログともにニーズがあることがわかったので、旧作も含めて順次対応させます。ブログの方はブログ内にも目次と概要紹介ページを作って、もう少し利便性をはかりたいと考えています。

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