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おもに少年愛と小説に関する雑記。エッセイとコラム
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少年の街 金と昌巳6
 小さなからだからすれば二食分ほどもたいらげて、その後昌巳はこんこんと眠った。
 翌朝、目覚めた時、また金はいなかった。昌巳はもぞもぞと足を動かしてみた。普通に歩けそうだ。若いいのちのエネルギーが吸い寄せられるように、昌巳のからだに戻りつつあった。
 布団の足下あたりにあったズボンを穿いて、昌巳は戸外に出る。空気はやはり、自分には冷たい気がした。コンクリートの階段を降り、診療所のドアを叩いた。
 「開いてるよ」
 素っ気ない返事が終わるか終わらないかに、昌巳はドアを開いていた。
 「おう、ちょうどよかったぜ、横になれ」
 「もう大丈夫やて」
 「アホか。医者の俺がまだだめだって言ってるんだよ。黴菌がまた増えだしたら元も子もないし、外側の炎症の具合も、まだみていかにゃならん」
 昌巳は黙って診察台に横になった。金は言葉もかけず無造作に昌巳の下半身を裸にした。消毒液を浸したガーゼを陰部に当てると、昌巳は思わず身を縮める。
 「冷たいわ……」
 昨日は元気がなく、黙って処置されていた昌巳だったが、今日は恥ずかしさもあってかよく喋った。
 「しげしげ見んといてくれ。ちょっとそここそばい……て」
 昌巳は身を捩るが、金は遠慮無く「処置」を続けながら言った。
 「ここに膿が貯まるんだよ。決してエロい意図はない。必ずない。しかし見事にきれいになってるな。外用薬はいらない。風呂かシャワーできれいにするのが一番だ。シャワーは何とかなる、だろ」
 返事はすぐに返ってこない。昌巳の表情にかすかな翳りを見た気がした。金は何か雰囲気を変えるジョークの一つも飛ばそうと思ったが、何も出なかった。沈黙を破り、先に口を開いたのは昌巳だった。
 「しかしホンマ、先生変わっとるな」
 「そう言われたのは初めてじゃないが、なぜだ?」
 「一銭にもならんのに……。普段俺だけ違ごて、誰にもチップ百円でもやったことないやろ。ドケチのおっさんや思てたのに」
 金はガーゼを置いた。
 「勘違いするなよ。俺は慈善事業に興味はねえ。からだで払ってもらうと言ったろ? 仕事なのさ。ちゃんと考えてるぜ。それからチップなんてな。俺はな、ここに暮らしてるんだ。ショートステイの旅行者じゃない。毎日会うガキどもに百円だろうが二百円だろうがいちいちチップをやってたら、俺のジンセイのマネープランが台無しになるじゃねえか」
 興奮した強い調子は、やはり途中からいつもの軽さに戻っていた。
 「マネープランて、そんなもんとっくに狂ってしもたから、こんなボロ病院やってんのとちゃうんかいな」
 まともなことを言おうとすると、どうしても口下手である自分をわかっている昌巳は、それでも思い切ってまじめな話をしようと思っていて、また軽くいなされたので、やはりいつもの生意気な悪態をついたのだが、意外にもさっと金の顔がこわばった。
 「……触れてはならない部分に触れたな」
 金はデスクのペン立てのような器具入れから、先の鋭利な医療用の鋏を抜き取った。
 「やはりここは切断することにする」
 目指すのは昌巳の性器だった。
 「ちょっと、おっさん! アホか! やめろ、ええ加減にせえて!」
 細長い診療台から、昌巳の体が転落した。

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近況他
■管理人動向

 この度の入院に関しましては、多くの方から温かい励ましをいただきありがとうございます。m(_ _)m

 現状の見通しで、週明けの退院です(30日火曜が濃厚です)。
 従って「CUTE」は顔出しも不可能となりました。今となっては駆け込み申し込みしなくてよかったです。ただ、この機会にお会いできるかも知れなかった方には申し訳ないというか、とても残念です。でも、こんなところで無理はできませんので……。
 昨日手術ではないのですが検査のため外科的処置を受けたので、夜は発熱して、ややきつかったものの、今は抗生剤の点滴を受けつつ、こうしてPCに向かっているので、体調はまずまずです。
 退院したその日から、走ったり飛んだり暴飲暴食以外は、普通にやれるでしょう。

 何か体調の急転がない限り2/12ショタスクラッチはサークル参加します。予定していた新刊も、無理はしませんが極力間に合わせます。当日はよろしくお願いします。

■メールでのお問い合わせについて

 「BBSのローマ字4字でって何ですか? 説明して下さい」
 返信不要と考えましたが、皆様はどうお考えになりますか。

 また、サイトコンテンツの「これは事実ですか?」といった問い。
 全てがアウトとは考えません。 
 BARの、「この文章のベースにしている実際の事件があったなら知りたい」といった趣旨なら、わかります。
 それならこちらも、「ここまでは実際の事件のなぞりそのもので、性的描写を味付けしました」とか「本当は被害者は少女だったのですが、置き換えてみました」とか、ネタを割る答えは、させていただいてもいいかな、と思います。
 しかし、事実なのか作り話なのかということそのものに興味が注がれている場合、なぜそんなことを知りたいのか僕には理解もできませんし、お答えすることもできません。
 入り口ページに、このサイトのコンテンツは全てフィクションである、と明記してあります。事実かどうかなどよりも、夢うつつの境のような気持ちで、禁じられた世界を楽しんでいただきたいと考えます。

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子ども部屋5
 マンションの一階の、つぶれた英会話塾の跡の空きテナントの前に、煙草の自動販売機がある。しかしあろうことか大半が売り切れランプだった。自販機に棚卸しなんてあるのか? 塾に続いて倒産か? 俺は舌打ちして、2ブロックだけ歩いたところにあるコンビニの前の自販機で、キャメルを二箱買った。パッケージの、この異常なほどの注意書きは何だろう? この箱の中身の半分以上が税金だなんてどういうことなのか? と、いちいち考えてしまうのだが、今となるとやめるのも何だか癪なのだ。平均的な成人は、一切ニコチンを断ち、四日間程度辛抱すれば禁断症状から離脱できるので、何ヶ月かでも売るのをやめればみんな吸わなくなるというのに、この注意書きは全く偽善だ。
 ドアの電子ロックを解除する。普通のシリンダ鍵がついているのだが、合い鍵を一本、もしかしたら遊びに来る悪ガキの一人がくすねたかもしれないとおそれだしてから、自前で電子ロックをつけた。子どもは純真だというが、一面それは真実だが、実際は大人と同じだけ様々なタイプがいる。
 小さな子が極度の悪さをしないのは、圧倒的に力で勝る大人に支配されているという要素が大きい。無論本当に幼い子の宇宙は母親しかなく(もっと前はその胎内である)、その後家族に、数人の友達に、と広がっていく。自分の宇宙が広がるとともに、過去の小さな宇宙を疑い、時には憎み破壊しようとするのだ。あるいはまた、今これから踏み込もうとする新しい宇宙に拒まれたと感じるとき、それを敵視し、攻撃する。
 ……まあいずれにせよ、手クセの悪いガキもいる。それもまたかわいい面もあるわけで、いやな思いをしないために、嘘や裏切りをあらかじめ防御するのだ。中学生くらいになれば、隙だらけの甘い大人に心を許さなくなる(ありていに言えば「なめる」)子も多い。

 ドアを開けて中に入る。シャワーの水音は止まって、洗濯機のごおんごおんというモーター音が静かに聞こえ続けていた。脱衣場のドアも開いていた。中に彼はいない。
 そして、リビングの引き戸を開けて、のけぞった。二、三歩、あとずさったほどだ。
 「……何をしとるんやお前?」
 「ゲーム」
 ぶっきらぼうにこたえた伸介は全裸で、先日新調したばかりの32インチ液晶テレビの前の、大きな丸いクッションに、丸出しの尻を沈めて格闘ゲームをしていた。
 「ゲームはわかっとるわ。そのカッコは何や」
 むずむずと股間が反応した。何か先制攻撃を食らってしまった気がして、復讐せねばなるまい、と、理不尽な発想が浮かんだ。
 「せやかてまだ洗濯機回ってるやん。パンツまで放り込んでからに」
 もっともだ。
 俺は黙ってクローゼットを開け、自分の黒地に白いプリントのTシャツと、トランクスを投げた。伸介は振り向きもしない。俺は横合いからゲームにポーズをかけた。
 伸介はほのかに赤い頬をぷっとふくらませて、シャツを取る。髪はまだかなり水分を含んでいて、豊かに白く、天井のまばゆい蛍光灯の光を返し、いくらかは額に張りついている。バンザイをしてシャツを腕に通す伸介を、少し手伝う。甘い匂い、眩暈のするような素肌。伸介は、トランクスを穿かず、俺の大きなシャツを尻の下にくぐらせて、前もそのシャツで隠した。何となく、彼がそうするのを、俺はあらかじめ期待して、誘導していたような気がしていた。
 バスルームに戻って、無造作に洗濯機にかけてあった伸介の使った、湿り気をおびたオレンジのバスタオルを取り、リビングに戻り彼の後ろに座って、タオルを彼の頭にふわりとかけて、指を立て強めに拭った。
 「もうゲームしてええ?」
 間近に俺を見上げる伸介が、また笑って歯をのぞかせた。俺はあえてやや無愛想気味に、うなずいてみせる。
 「ほなここ」
 伸介はクッションの座り位置をさっと左にずらして、ぽんぽんと空いた位置を叩くのだ。一緒にやろうということだ。遠慮はいらない。俺は密着して、彼の横に腰を落とした。

 あとの展開を仕組むために、いろいろ聞き出そうという思惑はあったが、もう少しあとにしようか。運命の車輪はもう回転を始めていると、はっきりと感じていた。慌てなくてもきっとなるようになるのだ。逆に言えばもう、俺も伸介もその輪の回転から逃れられはしないのだ。

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■小幅な更新&修正
 今後ちょっとした訂正や、メインの小説に関わらない細かなデザイン変更などの「マイナー更新」は当ブログInfomationにてお知らせしようと思います。
 全てをここで、とも思ったのですが、トップを見ても小説が新規アップされてるのがわからないとかいうのもどうかと思いますので、とりあえず。

今回はPC版のみ

■ご案内コーナーの「作品傾向星取表」を削除し、代わりに図書室の作品リンクに「キーワード」を加えました。これと紹介コメントの方が「星」よりわかりやすいかと思いまして。キーワードは携帯版と比較対照すらしていませんが、大きな矛盾はないと思います。詳しさに欠ける気もしますが、そこはコメントもあるのでまずはこれで。見直しはあり得ます。
 作品ごとの後書きっぽいものは、すでにくっついてるものもありますが、ブログに移行して検索で読めるようにした方が、新しいお客さんにとっては見やすいかもしれませんね。

■リンクコーナーですが、特に休止や移転の連絡なく、リンク切れのサイトを整理しました。「一次整理」です。まだリンク切れあるかもしれません。

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少年の街 金と昌巳5
 昌巳はそう長くトイレでがんばっていたわけではないが、金は待つ間、昌巳の寝ていた、へこんだ敷き布団の四隅を直したり、昌巳の半ズボンを手に取ってみたり、落ち着かなかった。半ズボンは、寝かせるときゴワつくので穿かせないでいたのだ。その半ズボンのヒップポケットから、何か小さなものが畳の上に落ちた。
 「あっと」
 それは小さなメモ帳で、上部をスプリング状の針金で綴じたものだ。ベージュの表紙は、下の角が両方とも雨水が染みて変色し、中の紙と一緒に上に反り上がっていた。少し気が咎めたが、金はページをめくる。
 意外なほど几帳面な小さな文字で、人の名前と、電話番号らしい数字、何の目印もない四桁や五桁の数字が整理されず並んでいた。名前は、「井上」とか簡単な部分が漢字で、大部分はカタカナだった。記号のようだ。人名は記号。電話番号は大半が携帯かIPフォーンだ。目印のない数字は、桁数から考えて金額だろう。これは業務手帳のようなものだ。その業務は、少なくともこの数日はあがったりだったはずだ。脱げば病気が明らかである。目に見える症状が出る前でも、顔色や空気から、客が好んで買うとは思えない。メモ帳の入っていたポケットにはちびた鉛筆が一本。前のポケットには小銭。それ以外何もなかった。
 「すんだ。……先生!? 先生!」
 金が昌巳の声に気づき、我に返ったのは、三度目に呼ばれてからだった。
 「おお、すまんすまん」
 金は必要以上に大きな声で返事し、メモ帳をヒップポケットに戻し、その半ズボンを布団の足下に置いてから、トイレのドアノブを回した。
 「もう」
 「ちゃんとケツ拭いたか?」
 昌巳が何か言う前に、金は彼の体を抱え上げ、布団に寝かせた。
 掛け布団を昌巳のからだにそっとかける金を見上げる彼の目は、いつになく穏やかだった。
 「なあ先生」
 「ん?」
 「腹減った」
 金は笑った。
 「出すもの出したら、空きがでたな。いい傾向だ。ちょっと待ってな」

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メシが
 メシがうまい。

 体型や生活習慣の割に縁がなかった糖尿病。ところが入院して検査したら血糖の値が病域の数値で、糖尿病食を強いられていた。食欲がなくて量は気にならなかったが、コストの関係で汁物を省いて米の飯を減らし、限られた品目で回すので、元気が出るに従ってつらくなってきていた。土曜の検査で、確実に血糖値が健康ゾーンに入ってきたので、医師に常食に戻してくれと言ったらOKが出た。この機に減量するなら糖尿病食のままがいいのだが、元気になってくれば少しは楽しみを、ということで、まあ肝心の肝臓の方も、もはや逆行はないという状態でもあったし、と。コーヒーも好きなら一杯くらい、ということだった。

 よく考えたらこんなにメシがうまいと感じたのは実に久しぶりだ。もうみそ汁付きのメシが楽しみでw
 仕事辞めたのも体調不良からだし、波があって、大勢で集まってメシを食うというのは勿論楽しめていたが、一人で食うメシは、作ろうと外食しようと、大してうまいと感じず一年以上、年末からは食欲が衰えて、だんだん味もしなくなり、とうとう買い物も料理も洗い物もできなくなり、このままでは死ぬかも、と病院に駆け込んだのだった。

 いつ死んでもいいやと思うことも多々あったが、この餓鬼のごとき食欲と、些細なことでの多幸感は、人間そう簡単に死ねるものではないということの証かもしれない。同時に、風邪発熱程度しか経験のない人には、病気を背負って生きるつらさはなかなかわからないとも思う。生老病死は四苦、きっと老いるということも、今の俺にはちょっと想像のつかないつらさなのだろう。

 というわけで経過は順調です。予定の三週間は無理かもしれませんが、むちゃくちゃ伸びるということもなさそうです。

 余談ながら、少し躁転してる疑いがあって、逆にブレーキを、と思ってるところ。ネット禁断症状からAirH"導入に続いて、昨日この機会にDSLiteを、と思って怒濤のように検索、アホみたいな値段で売ってるとこしか在庫がなく、PSPに切り替えて本体とソフト4本と、メモリースティック1GBを今日一気に買った。やばいね、金の使いすぎ。
 ソフトは、流行の脳をなんとかには全く興味はなく、ナムコミュージアムの1と2、メタルギアソリッド、カーチェイスのニードフォースピード。

 ゼビウスやギャラクシアン、懐かしくて涙が出る。 ゼビウスはPS2のを持ってたんだが、操作性が俺には厳しく(ジョイスティック買えばいいのだが)、なぜか画面の下が微妙に切れるのでプレイしにくかった。PSPのはいい。操作性がかなり素晴らしい。画面の小ささは気にならなかった。中学生の頃、ゲーセンに通って、一年で5000円くらいつぎ込んだ。大したことないと思われるかもしれないが、俺の中1の時の小遣いは月1500円だ。ハマったよなあ。
 メタルギアソリッドは、PS2のソリッド2はクリア、スネークイーターが途中で投げ出してあるが、シナリオの尋常でない凝りようが気に入っている。操作も尋常でない複雑さだが、EASYでプレイすれば適当にやっていてもシナリオを進めることは可能で、俺はアイテムを使いまくって血まみれで切り抜けて進めていた。
 ニードフォースピードはかつて親しかった子のお気に入りのゲームだ。破壊的なカーチェイスが楽しめる。教育的ではないwゲームだ。

 今はこれだけあれば十分だけど、アップルかPC98あたりと同じプレイバランスのWizardry1(Proving Ground of the Mad over Lord)、出ないかなあ、Windowsでできる海外版、なかなか見つからなくて……。PSPでまったりプレイできたら寝る前30分とか楽しそうだ。

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子ども部屋4
 シャワーノズルから湯の流れ落ちる音を背に、バスルームを出た。少しずつ今シャワーを浴びている少年のことを思い出していた。
 彼がここに来たのは、三度目のはずだ。常連と言っていい三人が、新しく連れてきた子だ。一番最近に来たのは、二週間ほど前か。そういう子は、入り浸るか、いつの間にか来なくなるかの二手しかないわけだが、俺には彼がどちらになるか、ちょっと予想はついていなかった。そもそも、あまり印象に残っていない。俺は彼とあまり話していない。名前も覚えていない。聞いたかどうかもだ。
 あの三人は五年と六年で、まあ仲がよければ歳が開いてもここらではタメ口が当たり前だが、一人歳下という印象はなかった。育ち遅れの五年生で間違いないだろう。先ほどの態度でも知れるが、銭湯などでは前を隠そうともしないタイプだ。よその地域ではいざ知らず、銭湯で極度に前を隠すのはむしろ恥ずかしい行為というのが、ここらの普通の子どもの感覚だ。五年か六年、つまり発毛前くらいから隠す子が増え、中三から高校に上がる頃には、また誰も隠さなくなる。ずっと隠さない子もいる。思春期になると急に変わる子もいるが、あの子は多分、ずっと隠さないタイプだ。現状ほとんど性の目覚めはなく、おそらく周囲の子らの背伸び気味の猥談にもついて行けていない感じだった。
 俺は玄関口に投げ出してある色のはげたランドセルのそばにしゃがみ、それに括りつけてある、いわゆる「給食袋」をつまみあげた。黄色いそれは雨水をたっぷり吸って重い。マジックで名前が書いてある。今度は読み取れる。彼自身の手によると思われる、拙くはないが子どもの字だった。「葎屋伸介」とある。葎屋は「むぐらや」と読む。かなり珍しい名字で、しかも彼はこの近くの学校の校区内に住んでいるに決まっているから、彼がどこの家の子かピンポイントで分かってしまった。その事実は彼の第一印象を裏切るものだった。営利誘拐じゃあるまいし、子どもの家庭環境などとりあえず意味はない。ただ、十歳やそこらの子どもの人格形成には家庭環境の影響はかなり大きいので、気に入った子を落としたい場合には、どこを突くか、大いに作戦の参考になるわけではあるが、それは長期戦の場合の話だ。

 意外と、長いシャワーだ。遠慮というものがない。また口元に、笑みがわき上がる。煙草を買ってこよう。

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少年の街 金と昌巳4
 昌巳は布団に横たわっていて、金の顔を見ると幾分血色がよくなったその顔に安堵の表情が広がった。差し迫って具合が悪くなったようには見えなかった。
 「何だ? どこか痛いのか」
 「先生、どこ行ってたん?」
 先生、というのはこの街での金の仇名のようなもので、敬称ではない。ここいらに定住している人間で、先生という呼称に値する生業をなす者は、金以外には自称芸術家くらいしかいなかった。したがって、こう呼んだからとてそれだけで昌巳が急に殊勝になったということはできない。
 「下の病院だ」
 「誰も患者なんかおらんのに?」
 「ああ、お察しの通りの閑古鳥だから片付けて店じまいだ。で、どうした?」
 奇妙な短い間があった。
 「……便所……」
 「は?」
 「うんこ、したいねん」
 金の顔に笑みが広がった。
 「何だよ……トイレのドアはそこだ。まあ通じがあるのは健康の……」
 影になった昌巳の表情が漂わせるものを感じ、金の言葉と笑みは、うつ向いた昌巳の表情の闇に飲まれるように消えていった。
 「……立たれへんねん。さっきからなんぼがんばっても足に力が入らへん……先生、俺どうなるんやろ……」
 悲痛な声だった。金は勢いよく腰を上げた。今昌巳と目を合わせる勇気はなかった。そのまま昌巳の頭の方にまわってしゃがみ、昌巳の脇の下に手を差し入れて彼のからだを抱え上げた。
 「どうもならんさ。まずはクソしてから考えろ」
 軽々と昌巳の小さなからだを宙に浮かせたまま、金は大股に歩いて、トイレのドアノブに手をかけた。昌巳を洋式の便座にゆっくりと座らせると、彼のパンツに指をかけた。
 「それは、自分でできる……」
 昌巳の小さな手が、金のごつい手に重なった。
 「そうか、じゃ終わったら呼べ。閉めるぞ」
 「うん」
 金は軽くドアを押して閉めると、小さくため息を洩らした。
 敵意のない人間しかいない、シェルターのような狭い空間に守られたことを、昌巳の無意識が確認したとき、過度の緊張に隠されていた彼の本来の疲労と衰弱が表面にあらわれたのだ。その現実がどうであれ、あの幼さで、安息できる巣を持たない彼が、発熱やだるさくらいならいざ知らず、歩けないと実感した時の不安と絶望と悲しみは、想像を絶し、安易に同情することすらおこがましいように金には感じられたのだ。金は先ほど昌巳の目を見ることを避けた自分を、無力だと感じていた。

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■BBSのカキコについて
 今入院中で、パソコンの方のカキコはなかなかチェックできないのですが、今日たいへん不快なカキコを発見したので削除しました。不快だったのは内容ではなく失敬な口調だったのですが、せっかくの機会なのでその内容についての私見を、ここに記しておきます。

 かの人物によれば、インターネットに存在した時点で、全てのコンテンツはリンクフリーなのだそうです。私はサイトの管理者なので、自分のサイトのルールは自分で決めます。たとえ法律に上のようなルールが定められていたとしても、私がそう決めたからにはうちはリンクフリーではありません。ましてや、礼儀知らずの鼻息の荒い個人の見解にうちの運営方針が左右されることはないのです。
 (無断リンクを)阻止できるならしてみろ、ということですが、とりあえずしません。まず阻止は不可能でしょう。ただ、防げないからやっていいという理屈にはならないですけどね。

 うちがリンクフリーにしていないのは、非常に特殊な嗜好を扱っているからです。むやみに幅広く知られても、何もいいことはありません。「リンクフリーではない」と断っておけば、少なくともうちのサイトを楽しみ、存続をのぞんでくれる方は、叩きや荒らしにつながりそうな場所にうちのURLを晒したりしないし、似たような嗜好の方のサイトと相互リンクもできます。 私はこのケースにおいては正論にも法律にも興味はありません。サイト運営上の利益を考えたNOTリンクフリーなのです。
 一方敵意や害意のある人間の、サイト外の広大なインターネットにおいての行動を、制約しきれるとも考えません。サイト内での意思表示が精一杯です。その意思表示にまで文句をつけるとは世の中には偉い人がいるものです。

 ただし、「無断転載」となるとかなり事情は異なります。これについては、無料公開の小説であっても著作権を保護されると考えていいでしょう。
 私はこれについても、あまりうるさくは言ってこなかった部類です。巨大掲示板に一作まるごとベタ貼りとか……。友人に指摘していただいて、私の作品であることがわかるようにしていただいた時点でよしとして、削除要請もしていません。サイトがいわば、鍵の開いたままの家みたいなもので、鍵をしっかりかけるのもまたインターネットでは大変で……といったところで、対策は不徹底です。が、鍵がかかってないからって泥棒に入っていいってことにならないのはリンクの場合と同じです。
 自分の作だ、と明らかに騙る盗作および、無いと思いつつ商利用などの金銭被害に遭った場合は、少々の精力を削られても、断固行動しますが、それ以外は自分のエネルギーとの兼ね合いになりますね。


※上記は全くの私見です。著作権についてはネット上で創作をする人のコンセンサスはもっともっと厳しいはずで、上のような主張を読むと苦々しく感じられるかも知れませんが、自分個人の作品に関してだけの私見ですのでご了承下さい。

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少年の街 金と昌巳3
 昌巳が眠りに落ち、再び目覚めて朧な意識で頭を振った時、突然間近に大声を聞き、驚きにからだを硬直させた。
 「起きたか! あ、すまんおどかしたか」
 昌巳は目をしばたたき首を振った。
「ううん……ここどこ?」
 「俺の寝ぐらだ」
 金の家は彼の診療所の真上にある。つまり、古いエンピツビルの三階で、当然敷地面積は診療所と全く同じだ。
 「下は診察ベッドがひとつきりでな。悪いが寝てる間に勝手に動かした。いたずらはしてないから安心しろ」
 「……脳みそ腐ってんのちゃうかホンマ……」
 運んでくれたことに対してなど、礼の言葉を口にしようかという思いがちょっとは脳裏をよぎった昌巳だったが、表情一つ変えないままの金の軽口に文字通り閉口して顔をしかめた。
 昌巳は陽に焼けた畳の六畳間に敷いた布団に寝かされていた。
 「腹減ってるか。おでんと……米の飯だけはたっぷりあるが」
 昌巳は自分のものでないかのように、腹を触って、
 「後にしてええ? もうちょっと寝てから……」
 と答え、金の顔を窺う。
 「好きにしなよ。点滴に栄養も入れたから、腹減った感じがしなくても不思議はない」
 うん、と小さくうなずき、昌巳は目を閉じ、再び眠りに落ちていった。

 「先生! 先生!」
 「どうした!」
 ドアの中から聞こえた昌巳の声に切迫したものを感じ、金は玄関のドアを乱暴に開けて部屋に飛び込んだ。

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