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おもに少年愛と小説に関する雑記。エッセイとコラム
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地獄の島プロローグ試案
容疑者Aの供述より

欧州某国、首都の警察、取調室にて


私は、そう、ほんの下っ端ですよ。何もコントロールできる立場にはなかった。

「教育指導員」、というけっこうな肩書きをいただいていました。……私のような立場の人間は、私が在職した間、六人を切ることはなかったが、また十人を上回ることはなかった。

私どもの上に、三~四人の監督教官。うち一人が寮長を、順繰りに務めていたように思います。私立学校の校長のようなもので、特別な権威者ではない。

四人の教官も、学校で言えば教頭くらいの立場でしょうか。特別な権威者ではない。

左様私どもが何ものとも知らぬ、顔や体格や性格はイヤというほど知り抜いていても、名前は本名かどうかもわからないものしか知らない、不思議な、定期的、不定期的来訪者。彼らこそがあの施設における最高権威者でありました。

何もかも彼らによりコントロールされていた。少年達の運命はもちろん、もしかすると指導員たる私どもの運命すらね。

少年は多いときで40名もいたでしょうか。その時はいささか過密でしたかな。施設閉鎖の直前には、教官と生徒が同じくらいの数になっていて、これはこれでいびつでした。



その施設は、荒涼たる孤島ザントフォールトの、元保養施設。つまりは別荘のような建物を買い取って、改修し、犯罪性向の子、親が死ぬか養育できないかして、行き場を失った子などを預かり、衣食と教育を授けるという目的のために、設立されました。表向きはね。

設立そのものは40年前だとか。私が知るのは閉鎖した20年前に近い頃のみですが。

誰の目も届かぬ孤島という立地の他は、そう特別ではない。我が国の福祉は先進国最低レベルですからな。資産のある「篤志家」の力なくしては、児童養育施設も成り立ち行かない。いや、ああ、こんなことは私が述べるまでもないですか。



孤島の施設は、コの字型の建物を二つ、背中合わせにしたような構造になっていて、女子寮と男子寮が完全に分かたれていました。私が話せるのは男子寮のことのみですよ。先ほどの寮生の人数も、男子寮のみのお話です。

さて、コの字の南側の一の字を、私ども指導員、教官の私室、生活のための施設、職員室、寮長室、ゲストルーム、などが占めます。それから南北の一の字に、学習室、作業室、調理室、などという、学校らしい施設が整えられておりました。末期はいささか老朽化していましたが、街中の施設に見劣りしないものだったのではないでしょうか。ええ。

北側の一の字が、生徒の生活棟です。ああ、言い忘れましたが建物は二階建てです。ぶち抜きの一間に、二段ベッドがずらりと並んでいまして、部屋という感じではなかったですな。寮生が増えてベッドが増床された折りには、子ども達自身は気づく由もないですが、独特の体臭がこもって、私を喜ばせました。……それは罪になるのですかな。

ぶち抜きと言いましたが一番端の方は四部屋ほどの個室がありました。

これはもちろん、リーダーの寮生の私室、などではありません。(咳払い)一畳ほどの広さでトイレもなく窓もなく、ドアは鉄扉で小さな鉄格子の窓つきです。

つまり他の寮生に見え、聞こえるように誰かを罰するときの懲罰房でして……少々骨のある子が泣き叫んだり許しを乞うたりするのが、皆に丸聞こえになるのが効果的なんですな。……不愉快ですか? しかし、これは、ね。ここに入れられた段階では、まだその少年には救いがある。この程度の虐待とやらは、たぶんそこら中の施設で今も行われていますよ。お偉い人でも必要だとおっしゃる方もおられるでしょう。

……救い? そうです。地上にいる間、まだその子には救いがあるが、ひとたび地下に落ちたなら……二度と日の目を見られぬ可能性の方が高かった。そう、ザントフォールト愛護寮には、地下室がありました。建立初期はなかったようですがね。設立者は、寮の存在が世間から忘れ去られるのを待って、地下に彼らにとっての夢殿を作りました。



ちょうど、職員のための一の字の部分に、その地下室は作られていました。はい、私が勤めだした時にはもう、ありましたよ。何しろ……(咳払い)

階段を下りてすぐのところは、薄暗くて殺風景ながらつくりはちょっとしたホテルの一室のようで、まともに寝られるベッド(笑い)や、バスタブ、シャワーがありました。ただ、施設閉鎖の近づいた頃には、もうこすれどもこすれども落ちない血の染みが、バスタブにも床にもベッドにも染みついていて、そこに導かれた少年に絶望と恐怖を与えたものでした。

その「ゲストルーム」の奥が、細長い拷問部屋になっていました。

全てが使われたのを見たわけではありませんが、中世の頃の、使えば必ず死に至る鉄の処女のようなものから、鎖、縄、鞭、といった、「プレイ」に使えないこともないようなものまで、壁際にすらりと並んでいましたよ。



……ここまでは、お持ちの資料の裏付けというところですか、一致するでしょう? よろしい。
では、ここからは、主にその地下室で、私が見たもののいくつかを、詳らかに話させていただくとしましょうか。

(取調官をにらみつけて)
狂人の妄想と片付けるのは簡単だ。私もその方が助かるかもしれない。ま、現世も牢獄、だが。
これから話すことは全て事実であって、あなたや私と同じような姿をした、人間がしたことなのだ。それを忘れないことだ。

汝は人を罰するに値する人か?


(本編へ)

ブログでどの程度ネタバレしてたかもう忘れちゃったんですが、これがほぼ正式な設定、導入部となります。

僕が書くのは、この容疑者Aが見せつけられた「貴人」たちの残虐行為の短編数本。んで、ゲストさんもお願いしようかな、とか思っています。



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