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僕がここに連れてこられてから、もう一ヶ月は経つと思います。正確にはどのくらいか、わかりません。
1
お父さんとお母さんが三日くらい帰らなかった、あの日……そんな日は、この一、二年、珍しくなかったのだけれど……知らないおじさんが、僕のアパートにやってきて、僕を連れて帰りました。
お金持ちそうな、僕のお父さんよりも年上のおじさん。とても優しそうに、僕に話しかけました。お父さんとお母さんはもう帰らないから、私と一緒に来なさいって。
「かわいそうだけど」とおじさんは言いました。でも、お父さんやお母さんがいなくなるのは、僕は別に悲しくはなかったのです。いれば一日か二日に一回、ご飯くれるけど、最近それ以外、意味なかったから。お父さんやお母さんにとっての僕も、たぶんそんな感じだったのでしょう。
おじさんを僕は、「施設」の人だろうと思っていたけど、違いました。おじさんは僕を、自分の家に連れて帰ったのです。びっくりして、息が詰まるくらいの、大きなお屋敷に。
そしておじさんは、僕に、お父さんから僕を買ったと言いました。
親が子どもを売れるなんて僕は知りませんでした。でも買ったのだから、おじさんは僕を好きなように使う、と淡々と言いました。
よく意味がわからなくて、僕はただうなずいていました。
そして、僕の部屋だという、地下の薄暗い部屋に連れて行かれました。まるで牢屋みたいな、部屋。
その時になって、はじめて僕は、ちょっとまずいかも、と思いました。服を全部脱ぎなさいって、静かに言われて、こわくなりました。すごく。
おじさんを突き飛ばすようにして、おじさんの背後の扉に手をかけたら、殴られました。殴られるのは慣れっこだったけど、知らない人はどのくらいのことをするのかわからなくて……。
蹴倒されて、胸を踏まれながら僕は、「何でもするからやめて!」と叫びました。そしたらまた、服を脱げ、って、ちょっと息を荒くしながらも、相変わらず怒鳴らないで静かに言うのです。
全部服を脱いで、裸になると、服の代わりに首輪をもらいました。皮がごつごつして、鋲を打ったやつで、犬だったら、よっぽど大きなやつがしてそうなやつ。
それから僕は鎖で繋がれ、暗い地下の牢屋で暮らすことになりました。
2
それから僕は、おじさんにいろんなことを教わりました。
まず、僕が奴隷で、おじさんがご主人様で、僕はご主人様の言うことは何でも聞いて、ご主人様のためだけに生きなきゃいけないこと。
それから、おちんちんやお尻や、それから口とかの、僕の知らなかった使い方を毎日教わりました。
こわいし、気持ち悪いし、痛いし……僕がいやがると、ご主人様は僕を叩きました。手だけでなく、鞭というものや、剣道の竹刀とか……。裸の背中を叩かれると痛くて息もできず、もがき苦しみます。床に血がつきました。
だから僕は、いやでも本当にいやそうにしたのは最初の一日だけです。おちんちんを触ってもらったり、自分で触りながらいろんなやり方を教えてもらうのは、最初から気持ちよかったし、だから毎日、気持ちのいいことを楽しみにしてがまんして、ご主人様の教育を受けました。
口でご主人様のおちんちんにご奉仕するのは、二日目から教わりました。何となくどんな感じがするのか想像できて、僕もして欲しいと思いましたが、奴隷なので、僕はする一方です。僕のを気持ちよくするのは、おじさんの足とか、マッサージ機みたいな機械とか、自分の手です。
お尻のびっくりするような使い方も、もう慣れました。最初は痛いだけだけど、だんだん気持ちよくなってきます。そうするとご主人様は、自分のおちんちんより太い「張り型」や「バイブ」を僕のお尻に入れて、僕が痛がるまで動かします。そして、痛がってからもう、何だか気持ちがよくなったような気がするまで、やめてくれません。がんがん突いて、動かし続けます。いつの間にか気持ちがよくなるのです。今はもう、最初に入れられたバイブの倍くらいの太さのが、僕のお尻に入ります。たまに鏡でじっくり見せられると、僕のお尻の穴がびっくりするほど拡がっているのがわかります。
お薬は好きです。いつもの何倍も気持ちよくなって、ぼわんとして、おちんちんをいじるのがやめられなくなってしまいます。
縛られていると僕は、おちんちんがいじれないので、ご主人様に触らせて下さいとお願いします。何日か前は、靴でぐりぐり踏まれて、僕は射精しました。僕の精液を、僕はご主人様の靴から舐めとりました。
皮の「拘束具」をつけられて、お薬を注射されて、しかもおちんちんを触らせてくれない日もありました。
お尻ならしてやるというので、僕はお願いしました。
ローターを二個、僕のお尻に押し込んだご主人様がスイッチを入れると、ガラガラいって僕のお尻の中で二つが暴れます。
ご主人様は、そんな僕のお尻に、おちんちんを入れてくれました。
気持ちいい……。
僕はいつの間にか、自分でご主人様に腰を押しつけながら、もっと強く速くして下さいって、お願いしてました。どうして欲しいって、訊かれたから……。訊かれてないのに言うと、お仕置きなんだけど。
そして何だか視界がぼやけて、僕はおちんちんを触らないのに射精しました。
3
そして今日は、いつもの「調教部屋」に、四つん這いで入らされて、部屋の真ん中を見ると、今まで入れられた中で一番太いバイブが、変な機械にくっつけられて、こっちを向いていました。
ミシンみたいな鉄の胴から、棒が出ていて、その棒の先に、バイブがくっついています。機械は、木の板に固定されていて、板はネジで床にがっちり留めてあるみたいでした。バイブからも鉄の機械からも、コードが出ていて、部屋の隅のコンセントに繋がっているタップに、コンセントが挿してあります。
機械はアナルマシンというそうです。マシンの前に僕を座らせたご主人様は、突き出したバイブと僕のお尻の穴の高さが合うように、薄い革張りのマットを僕の腰の下に入れ、僕のお尻にローションをたっぷり注いで、慣らすように命令しました。
そして、僕は言われたとおり、アナルマシンから突き出ているバイブを、お尻に入れていきます。
硬いブラスチックの感触がして、お尻がぐいっと拡げられて、イボイボが僕のお尻の皺をこすって、僕はぞくぞくが止まりません。
バイブの中間くらいまで僕がお尻に飲み込むと、ご主人様は僕を止めて、そして僕の足と手を、足をがっと開いた状態で長い鉄パイプに縛りつけました。
さらに、首輪についた鎖を天井の輪に通して引っぱり、僕が横になれないようにします。僕は腰を突き出して、背中を浮かせた苦しい姿勢になりました。
こわいけど、僕はずっとぞくぞくして、おちんちんの先が湿ってきました。
それからご主人様は、僕の腕に点滴の針を刺しました。今日はお前の好きな薬の他に栄養もたっぷり入っている、とご主人様は言いました。
冷たいお薬が、僕のからだの中に入ってきます。注射じゃないのは初めてです。僕がそれに気を取られていると……。
ご主人様がバイブとアナルマシンのスイッチを入れました。
バイブが震えたりねじれたりするのは知っていたけど、アナルマシンの方は、僕はどうなるか知りませんでした。
それは、ピストン運動をして、僕のお尻を繰り返し自動的に突くのです。僕はのけぞって、びりびりくる感覚に耐えました。
僕はたまらず声を出します、あー、あーって。そしてからだを捩ります。そうしないと、とても耐えられません。
お腹は温かいし、お尻の内側はちょっと痛くて痺れるけど、鳥肌は立ちっぱなしで、気持ちよくてたまりません。お薬も効いてきたみたいです。ああ、あ……あ……
出る、よ……。
僕は射精して、自分のお腹を汚しました。それをちらっと見て、ご主人様は黙って部屋を出て行きました。
4
一時間ほどほっておかれて、ご主人様が戻ってきました。
「あれから出したか」と訊かれたので、僕は、「二回……」と答えました。
ご主人様が僕の正面の壁に、マジックで横、縦、横、と三本線を引きました。正の字を書いていくんです。
「はずして……」ご主人様は首を振りました。「百回出したら許してやるぞ」と言いました。
百回も……出すの……気持ちいいだろうな。もうずっと、続いてもいいな。栄養もあるから、何日でも続けられるって。百回になるまで、じっくり待ってやるって、ごしゅじんさまいいました。
…………。
僕は、またイキました。顔に精液かかって、自分の口に入ったよ。
ぼくは、なるべくイカないように辛抱しようと思いました。その方が、気持ちいいの、ずっと続くし、何も考えなくていいし……。
それに、ゆるされたらどうなるか、ぼくはこわかったです。
この部屋を出られても、ぼくには行くところがない。こんなにいろいろおそわったら、もうごしゅじんさまいないとぼくは、生きていけない。いたいのも、きもちいいのも、おわりになったらぼくはどうしたらいいかわからない。
頭が真っ白。でも気絶できない。首輪があるから眠れない。だからずっとつづくきもちいいの。ぼくはまたイッた。ぼやけた視線の向こうで、ご主人様がマジックの線を引く。
END
というわけでPixivの小説機能の実験をかねてイラスト付きSSなど書いてみました。まあほんとにただのヌキテキストです。でもテキスト発表超久々……
Pixiv版はこちら
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=28969
1
お父さんとお母さんが三日くらい帰らなかった、あの日……そんな日は、この一、二年、珍しくなかったのだけれど……知らないおじさんが、僕のアパートにやってきて、僕を連れて帰りました。
お金持ちそうな、僕のお父さんよりも年上のおじさん。とても優しそうに、僕に話しかけました。お父さんとお母さんはもう帰らないから、私と一緒に来なさいって。
「かわいそうだけど」とおじさんは言いました。でも、お父さんやお母さんがいなくなるのは、僕は別に悲しくはなかったのです。いれば一日か二日に一回、ご飯くれるけど、最近それ以外、意味なかったから。お父さんやお母さんにとっての僕も、たぶんそんな感じだったのでしょう。
おじさんを僕は、「施設」の人だろうと思っていたけど、違いました。おじさんは僕を、自分の家に連れて帰ったのです。びっくりして、息が詰まるくらいの、大きなお屋敷に。
そしておじさんは、僕に、お父さんから僕を買ったと言いました。
親が子どもを売れるなんて僕は知りませんでした。でも買ったのだから、おじさんは僕を好きなように使う、と淡々と言いました。
よく意味がわからなくて、僕はただうなずいていました。
そして、僕の部屋だという、地下の薄暗い部屋に連れて行かれました。まるで牢屋みたいな、部屋。
その時になって、はじめて僕は、ちょっとまずいかも、と思いました。服を全部脱ぎなさいって、静かに言われて、こわくなりました。すごく。
おじさんを突き飛ばすようにして、おじさんの背後の扉に手をかけたら、殴られました。殴られるのは慣れっこだったけど、知らない人はどのくらいのことをするのかわからなくて……。
蹴倒されて、胸を踏まれながら僕は、「何でもするからやめて!」と叫びました。そしたらまた、服を脱げ、って、ちょっと息を荒くしながらも、相変わらず怒鳴らないで静かに言うのです。
全部服を脱いで、裸になると、服の代わりに首輪をもらいました。皮がごつごつして、鋲を打ったやつで、犬だったら、よっぽど大きなやつがしてそうなやつ。
それから僕は鎖で繋がれ、暗い地下の牢屋で暮らすことになりました。
2
それから僕は、おじさんにいろんなことを教わりました。
まず、僕が奴隷で、おじさんがご主人様で、僕はご主人様の言うことは何でも聞いて、ご主人様のためだけに生きなきゃいけないこと。
それから、おちんちんやお尻や、それから口とかの、僕の知らなかった使い方を毎日教わりました。
こわいし、気持ち悪いし、痛いし……僕がいやがると、ご主人様は僕を叩きました。手だけでなく、鞭というものや、剣道の竹刀とか……。裸の背中を叩かれると痛くて息もできず、もがき苦しみます。床に血がつきました。
だから僕は、いやでも本当にいやそうにしたのは最初の一日だけです。おちんちんを触ってもらったり、自分で触りながらいろんなやり方を教えてもらうのは、最初から気持ちよかったし、だから毎日、気持ちのいいことを楽しみにしてがまんして、ご主人様の教育を受けました。
口でご主人様のおちんちんにご奉仕するのは、二日目から教わりました。何となくどんな感じがするのか想像できて、僕もして欲しいと思いましたが、奴隷なので、僕はする一方です。僕のを気持ちよくするのは、おじさんの足とか、マッサージ機みたいな機械とか、自分の手です。
お尻のびっくりするような使い方も、もう慣れました。最初は痛いだけだけど、だんだん気持ちよくなってきます。そうするとご主人様は、自分のおちんちんより太い「張り型」や「バイブ」を僕のお尻に入れて、僕が痛がるまで動かします。そして、痛がってからもう、何だか気持ちがよくなったような気がするまで、やめてくれません。がんがん突いて、動かし続けます。いつの間にか気持ちがよくなるのです。今はもう、最初に入れられたバイブの倍くらいの太さのが、僕のお尻に入ります。たまに鏡でじっくり見せられると、僕のお尻の穴がびっくりするほど拡がっているのがわかります。
お薬は好きです。いつもの何倍も気持ちよくなって、ぼわんとして、おちんちんをいじるのがやめられなくなってしまいます。
縛られていると僕は、おちんちんがいじれないので、ご主人様に触らせて下さいとお願いします。何日か前は、靴でぐりぐり踏まれて、僕は射精しました。僕の精液を、僕はご主人様の靴から舐めとりました。
皮の「拘束具」をつけられて、お薬を注射されて、しかもおちんちんを触らせてくれない日もありました。
お尻ならしてやるというので、僕はお願いしました。
ローターを二個、僕のお尻に押し込んだご主人様がスイッチを入れると、ガラガラいって僕のお尻の中で二つが暴れます。
ご主人様は、そんな僕のお尻に、おちんちんを入れてくれました。
気持ちいい……。
僕はいつの間にか、自分でご主人様に腰を押しつけながら、もっと強く速くして下さいって、お願いしてました。どうして欲しいって、訊かれたから……。訊かれてないのに言うと、お仕置きなんだけど。
そして何だか視界がぼやけて、僕はおちんちんを触らないのに射精しました。
3
そして今日は、いつもの「調教部屋」に、四つん這いで入らされて、部屋の真ん中を見ると、今まで入れられた中で一番太いバイブが、変な機械にくっつけられて、こっちを向いていました。
ミシンみたいな鉄の胴から、棒が出ていて、その棒の先に、バイブがくっついています。機械は、木の板に固定されていて、板はネジで床にがっちり留めてあるみたいでした。バイブからも鉄の機械からも、コードが出ていて、部屋の隅のコンセントに繋がっているタップに、コンセントが挿してあります。
機械はアナルマシンというそうです。マシンの前に僕を座らせたご主人様は、突き出したバイブと僕のお尻の穴の高さが合うように、薄い革張りのマットを僕の腰の下に入れ、僕のお尻にローションをたっぷり注いで、慣らすように命令しました。
そして、僕は言われたとおり、アナルマシンから突き出ているバイブを、お尻に入れていきます。
硬いブラスチックの感触がして、お尻がぐいっと拡げられて、イボイボが僕のお尻の皺をこすって、僕はぞくぞくが止まりません。
バイブの中間くらいまで僕がお尻に飲み込むと、ご主人様は僕を止めて、そして僕の足と手を、足をがっと開いた状態で長い鉄パイプに縛りつけました。
さらに、首輪についた鎖を天井の輪に通して引っぱり、僕が横になれないようにします。僕は腰を突き出して、背中を浮かせた苦しい姿勢になりました。
こわいけど、僕はずっとぞくぞくして、おちんちんの先が湿ってきました。
それからご主人様は、僕の腕に点滴の針を刺しました。今日はお前の好きな薬の他に栄養もたっぷり入っている、とご主人様は言いました。
冷たいお薬が、僕のからだの中に入ってきます。注射じゃないのは初めてです。僕がそれに気を取られていると……。
ご主人様がバイブとアナルマシンのスイッチを入れました。
バイブが震えたりねじれたりするのは知っていたけど、アナルマシンの方は、僕はどうなるか知りませんでした。
それは、ピストン運動をして、僕のお尻を繰り返し自動的に突くのです。僕はのけぞって、びりびりくる感覚に耐えました。
僕はたまらず声を出します、あー、あーって。そしてからだを捩ります。そうしないと、とても耐えられません。
お腹は温かいし、お尻の内側はちょっと痛くて痺れるけど、鳥肌は立ちっぱなしで、気持ちよくてたまりません。お薬も効いてきたみたいです。ああ、あ……あ……
出る、よ……。
僕は射精して、自分のお腹を汚しました。それをちらっと見て、ご主人様は黙って部屋を出て行きました。
4
一時間ほどほっておかれて、ご主人様が戻ってきました。
「あれから出したか」と訊かれたので、僕は、「二回……」と答えました。
ご主人様が僕の正面の壁に、マジックで横、縦、横、と三本線を引きました。正の字を書いていくんです。
「はずして……」ご主人様は首を振りました。「百回出したら許してやるぞ」と言いました。
百回も……出すの……気持ちいいだろうな。もうずっと、続いてもいいな。栄養もあるから、何日でも続けられるって。百回になるまで、じっくり待ってやるって、ごしゅじんさまいいました。
…………。
僕は、またイキました。顔に精液かかって、自分の口に入ったよ。
ぼくは、なるべくイカないように辛抱しようと思いました。その方が、気持ちいいの、ずっと続くし、何も考えなくていいし……。
それに、ゆるされたらどうなるか、ぼくはこわかったです。
この部屋を出られても、ぼくには行くところがない。こんなにいろいろおそわったら、もうごしゅじんさまいないとぼくは、生きていけない。いたいのも、きもちいいのも、おわりになったらぼくはどうしたらいいかわからない。
頭が真っ白。でも気絶できない。首輪があるから眠れない。だからずっとつづくきもちいいの。ぼくはまたイッた。ぼやけた視線の向こうで、ご主人様がマジックの線を引く。
END
というわけでPixivの小説機能の実験をかねてイラスト付きSSなど書いてみました。まあほんとにただのヌキテキストです。でもテキスト発表超久々……
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http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=28969
PR
容疑者Aの供述より
欧州某国、首都の警察、取調室にて
私は、そう、ほんの下っ端ですよ。何もコントロールできる立場にはなかった。
「教育指導員」、というけっこうな肩書きをいただいていました。……私のような立場の人間は、私が在職した間、六人を切ることはなかったが、また十人を上回ることはなかった。
私どもの上に、三~四人の監督教官。うち一人が寮長を、順繰りに務めていたように思います。私立学校の校長のようなもので、特別な権威者ではない。
四人の教官も、学校で言えば教頭くらいの立場でしょうか。特別な権威者ではない。
左様私どもが何ものとも知らぬ、顔や体格や性格はイヤというほど知り抜いていても、名前は本名かどうかもわからないものしか知らない、不思議な、定期的、不定期的来訪者。彼らこそがあの施設における最高権威者でありました。
何もかも彼らによりコントロールされていた。少年達の運命はもちろん、もしかすると指導員たる私どもの運命すらね。
少年は多いときで40名もいたでしょうか。その時はいささか過密でしたかな。施設閉鎖の直前には、教官と生徒が同じくらいの数になっていて、これはこれでいびつでした。
1
その施設は、荒涼たる孤島ザントフォールトの、元保養施設。つまりは別荘のような建物を買い取って、改修し、犯罪性向の子、親が死ぬか養育できないかして、行き場を失った子などを預かり、衣食と教育を授けるという目的のために、設立されました。表向きはね。
設立そのものは40年前だとか。私が知るのは閉鎖した20年前に近い頃のみですが。
誰の目も届かぬ孤島という立地の他は、そう特別ではない。我が国の福祉は先進国最低レベルですからな。資産のある「篤志家」の力なくしては、児童養育施設も成り立ち行かない。いや、ああ、こんなことは私が述べるまでもないですか。
2
孤島の施設は、コの字型の建物を二つ、背中合わせにしたような構造になっていて、女子寮と男子寮が完全に分かたれていました。私が話せるのは男子寮のことのみですよ。先ほどの寮生の人数も、男子寮のみのお話です。
さて、コの字の南側の一の字を、私ども指導員、教官の私室、生活のための施設、職員室、寮長室、ゲストルーム、などが占めます。それから南北の一の字に、学習室、作業室、調理室、などという、学校らしい施設が整えられておりました。末期はいささか老朽化していましたが、街中の施設に見劣りしないものだったのではないでしょうか。ええ。
北側の一の字が、生徒の生活棟です。ああ、言い忘れましたが建物は二階建てです。ぶち抜きの一間に、二段ベッドがずらりと並んでいまして、部屋という感じではなかったですな。寮生が増えてベッドが増床された折りには、子ども達自身は気づく由もないですが、独特の体臭がこもって、私を喜ばせました。……それは罪になるのですかな。
ぶち抜きと言いましたが一番端の方は四部屋ほどの個室がありました。
これはもちろん、リーダーの寮生の私室、などではありません。(咳払い)一畳ほどの広さでトイレもなく窓もなく、ドアは鉄扉で小さな鉄格子の窓つきです。
つまり他の寮生に見え、聞こえるように誰かを罰するときの懲罰房でして……少々骨のある子が泣き叫んだり許しを乞うたりするのが、皆に丸聞こえになるのが効果的なんですな。……不愉快ですか? しかし、これは、ね。ここに入れられた段階では、まだその少年には救いがある。この程度の虐待とやらは、たぶんそこら中の施設で今も行われていますよ。お偉い人でも必要だとおっしゃる方もおられるでしょう。
……救い? そうです。地上にいる間、まだその子には救いがあるが、ひとたび地下に落ちたなら……二度と日の目を見られぬ可能性の方が高かった。そう、ザントフォールト愛護寮には、地下室がありました。建立初期はなかったようですがね。設立者は、寮の存在が世間から忘れ去られるのを待って、地下に彼らにとっての夢殿を作りました。
3
ちょうど、職員のための一の字の部分に、その地下室は作られていました。はい、私が勤めだした時にはもう、ありましたよ。何しろ……(咳払い)
階段を下りてすぐのところは、薄暗くて殺風景ながらつくりはちょっとしたホテルの一室のようで、まともに寝られるベッド(笑い)や、バスタブ、シャワーがありました。ただ、施設閉鎖の近づいた頃には、もうこすれどもこすれども落ちない血の染みが、バスタブにも床にもベッドにも染みついていて、そこに導かれた少年に絶望と恐怖を与えたものでした。
その「ゲストルーム」の奥が、細長い拷問部屋になっていました。
全てが使われたのを見たわけではありませんが、中世の頃の、使えば必ず死に至る鉄の処女のようなものから、鎖、縄、鞭、といった、「プレイ」に使えないこともないようなものまで、壁際にすらりと並んでいましたよ。
……ここまでは、お持ちの資料の裏付けというところですか、一致するでしょう? よろしい。
では、ここからは、主にその地下室で、私が見たもののいくつかを、詳らかに話させていただくとしましょうか。
(取調官をにらみつけて)
狂人の妄想と片付けるのは簡単だ。私もその方が助かるかもしれない。ま、現世も牢獄、だが。
これから話すことは全て事実であって、あなたや私と同じような姿をした、人間がしたことなのだ。それを忘れないことだ。
汝は人を罰するに値する人か?
(本編へ)
ブログでどの程度ネタバレしてたかもう忘れちゃったんですが、これがほぼ正式な設定、導入部となります。
僕が書くのは、この容疑者Aが見せつけられた「貴人」たちの残虐行為の短編数本。んで、ゲストさんもお願いしようかな、とか思っています。
欧州某国、首都の警察、取調室にて
私は、そう、ほんの下っ端ですよ。何もコントロールできる立場にはなかった。
「教育指導員」、というけっこうな肩書きをいただいていました。……私のような立場の人間は、私が在職した間、六人を切ることはなかったが、また十人を上回ることはなかった。
私どもの上に、三~四人の監督教官。うち一人が寮長を、順繰りに務めていたように思います。私立学校の校長のようなもので、特別な権威者ではない。
四人の教官も、学校で言えば教頭くらいの立場でしょうか。特別な権威者ではない。
左様私どもが何ものとも知らぬ、顔や体格や性格はイヤというほど知り抜いていても、名前は本名かどうかもわからないものしか知らない、不思議な、定期的、不定期的来訪者。彼らこそがあの施設における最高権威者でありました。
何もかも彼らによりコントロールされていた。少年達の運命はもちろん、もしかすると指導員たる私どもの運命すらね。
少年は多いときで40名もいたでしょうか。その時はいささか過密でしたかな。施設閉鎖の直前には、教官と生徒が同じくらいの数になっていて、これはこれでいびつでした。
1
その施設は、荒涼たる孤島ザントフォールトの、元保養施設。つまりは別荘のような建物を買い取って、改修し、犯罪性向の子、親が死ぬか養育できないかして、行き場を失った子などを預かり、衣食と教育を授けるという目的のために、設立されました。表向きはね。
設立そのものは40年前だとか。私が知るのは閉鎖した20年前に近い頃のみですが。
誰の目も届かぬ孤島という立地の他は、そう特別ではない。我が国の福祉は先進国最低レベルですからな。資産のある「篤志家」の力なくしては、児童養育施設も成り立ち行かない。いや、ああ、こんなことは私が述べるまでもないですか。
2
孤島の施設は、コの字型の建物を二つ、背中合わせにしたような構造になっていて、女子寮と男子寮が完全に分かたれていました。私が話せるのは男子寮のことのみですよ。先ほどの寮生の人数も、男子寮のみのお話です。
さて、コの字の南側の一の字を、私ども指導員、教官の私室、生活のための施設、職員室、寮長室、ゲストルーム、などが占めます。それから南北の一の字に、学習室、作業室、調理室、などという、学校らしい施設が整えられておりました。末期はいささか老朽化していましたが、街中の施設に見劣りしないものだったのではないでしょうか。ええ。
北側の一の字が、生徒の生活棟です。ああ、言い忘れましたが建物は二階建てです。ぶち抜きの一間に、二段ベッドがずらりと並んでいまして、部屋という感じではなかったですな。寮生が増えてベッドが増床された折りには、子ども達自身は気づく由もないですが、独特の体臭がこもって、私を喜ばせました。……それは罪になるのですかな。
ぶち抜きと言いましたが一番端の方は四部屋ほどの個室がありました。
これはもちろん、リーダーの寮生の私室、などではありません。(咳払い)一畳ほどの広さでトイレもなく窓もなく、ドアは鉄扉で小さな鉄格子の窓つきです。
つまり他の寮生に見え、聞こえるように誰かを罰するときの懲罰房でして……少々骨のある子が泣き叫んだり許しを乞うたりするのが、皆に丸聞こえになるのが効果的なんですな。……不愉快ですか? しかし、これは、ね。ここに入れられた段階では、まだその少年には救いがある。この程度の虐待とやらは、たぶんそこら中の施設で今も行われていますよ。お偉い人でも必要だとおっしゃる方もおられるでしょう。
……救い? そうです。地上にいる間、まだその子には救いがあるが、ひとたび地下に落ちたなら……二度と日の目を見られぬ可能性の方が高かった。そう、ザントフォールト愛護寮には、地下室がありました。建立初期はなかったようですがね。設立者は、寮の存在が世間から忘れ去られるのを待って、地下に彼らにとっての夢殿を作りました。
3
ちょうど、職員のための一の字の部分に、その地下室は作られていました。はい、私が勤めだした時にはもう、ありましたよ。何しろ……(咳払い)
階段を下りてすぐのところは、薄暗くて殺風景ながらつくりはちょっとしたホテルの一室のようで、まともに寝られるベッド(笑い)や、バスタブ、シャワーがありました。ただ、施設閉鎖の近づいた頃には、もうこすれどもこすれども落ちない血の染みが、バスタブにも床にもベッドにも染みついていて、そこに導かれた少年に絶望と恐怖を与えたものでした。
その「ゲストルーム」の奥が、細長い拷問部屋になっていました。
全てが使われたのを見たわけではありませんが、中世の頃の、使えば必ず死に至る鉄の処女のようなものから、鎖、縄、鞭、といった、「プレイ」に使えないこともないようなものまで、壁際にすらりと並んでいましたよ。
……ここまでは、お持ちの資料の裏付けというところですか、一致するでしょう? よろしい。
では、ここからは、主にその地下室で、私が見たもののいくつかを、詳らかに話させていただくとしましょうか。
(取調官をにらみつけて)
狂人の妄想と片付けるのは簡単だ。私もその方が助かるかもしれない。ま、現世も牢獄、だが。
これから話すことは全て事実であって、あなたや私と同じような姿をした、人間がしたことなのだ。それを忘れないことだ。
汝は人を罰するに値する人か?
(本編へ)
ブログでどの程度ネタバレしてたかもう忘れちゃったんですが、これがほぼ正式な設定、導入部となります。
僕が書くのは、この容疑者Aが見せつけられた「貴人」たちの残虐行為の短編数本。んで、ゲストさんもお願いしようかな、とか思っています。
結局は新刊にできなかったので、「闇走る狼」続きを載せます。と言っても途中までなんですが。サイトか本かはわかりませんが、いつか完成させます。
それからお絵かきBBSの方に藤々さんからの頂き物をアップしています。ぜひご覧下さい。四枚の連作なので、小出しにさせていただきます(笑)
闇走る狼 続き
うめいてみたり、縛られた手足を必死に動かしてみても、いたずらに体力を消耗するばかりと悟ったティムは、荒い息を吐きながら、蒸せる暑さに耐えていた。
気持ちが少し落ち着いてくると、ティムは気づいた。かすかな、規則的な物音に。
それは生き物の息づかいに相違ない。ティムは寸時怯えたが、それが人のもの違いないとすぐに気づき、闇の中、視力の回復を待ちながら、重い木箱の向こう側から聞こえる呼吸の音に、耳を傾けた。
「誰かいるの?」
それは子どもの声だった。か細く小さな声だった。ティムは返事をすることができないが、塞がれた口から何とか声を漏らした。
箱の向こう側から、小さな頭がのぞいた。闇にまん丸な瞳だけが二つ光っている。コンテナの扉にはかすかに隙間がある。まだ外の陽は落ちていない。だから光は存在する。次第に少年の輪郭が、寝そべってもがくティムを見下ろす少年の顔が、ティムにしにんできるようなる。
丸顔で、幼い顔立ち。自分より二つくらい下かな、とティムは思った。
彼は手足を拘束されていない。口も塞がれていない。ティムは必死で、自分の手足の拘束や口のテープを剥がすように、動かぬ手足と言葉にならない声で訴えた。だが小さな少年は悲しげに首を振るばかりだった。この闇の中、ティムに見えるはずもなかったが、小さな少年の手首や足首にも縄の痕があり、その他の傷も、からだのあちこちにつけられていた。
ティムはなおも吠えるように訴え、少年を睨み、身を捩った。
やがてあきらめたように、身軽に箱を乗り越えた少年が、ティムの側にしゃがんで、ガムテープをゆっくりはがした。
「あ、痛た……」
「あ、ごめん」
「いや……」
ティムは頭を少し上げて、何とか笑ってみせる。
「縄……」
少年は首を振った。
「何でだよ? 手足さえ自由になればこんなとこ逃げてやる」
「外からぶっといかんぬきかかってるよ。絶対無理。でなきゃ僕が縛られてないわけないでしょ?」
確かにその通りだった。
「それに、逃げ損ねたら殺されるよ、たぶん」
少年は後ろを向き、何をするのかと思ったら粗末なシャツの背中をめくったのだった。見えない尻の部分まで、縦横に、やや治りかけであるが痛々しいみみず腫れがあった。木の枝か何かで、殴られたもののようだ。
そして、手のひらを見せると、右手の真ん中あたりに、三つの丸い瘢痕。これはタバコによるものだと、ティムにもわかった。
痛々しさが心にしみて、腹の底に重く不快な塊ができたように感じる。
「あいつら何だ? 俺達をどうする気なんだ?」
少年は首を振った。はっきりとはわからないと言う意味なのか、それとも絶望的な状況である、希望がないというNOの意味なのか……。
「夜の狼だよ」
「狼?」
「昔の日本では、子どもが突然いなくなると『カミカクシ』って言うんだって。神って言っても、妖怪とか天狗とか、何かの精霊のことみたいだけど。けどあいつらは、子どもをさらって、お金に換えるの。たぶんね」
噂は、ティムの村にも届いていたが、ティムは自分にはまるで関係のないことだと思っていた。その『夜の狼』に、自分が捕まるなんて。
「俺らがどうやって金に換わるって言うんだよ……」
「わかんない……わかんない……こわいんだ僕……」
少年が泣いている。自分も泣きたい。でも希望を捨てたわけじゃない。まだ何もわからないからだ。
「ねえ、名前は?」
「ベン……」
「俺、ティム。泣くなよ。あいつらが『夜の狼』だったら、俺達を殺して食うわけじゃないだろ。ほんとの獣みたいにさ。それじゃ金にならないもん。だったら、まだ助かる道があるかもしれないよ」
ベンは涙を拭いながら、うなずいた。
†
外の陽が落ちたのが幸い、コンテナの温度はずいぶん下がったが、日中に二人とも、かなりの水分を奪われていて、渇きに苦しんでいた。ベンがいつからコンテナに閉じこめられていたのかはわからないが、ティムより一日は長そうだった。むろんその間、食い物ものも飲み水も与えられなかったわけではあるまい。体の傷からすれば、それ以外のものもずいぶん与えられていたようだから。
トラックが大きく振動して、二人のからだはコンテナの前方に強く引きつけられた。後ろ手に拘束されているティムは、からだを前方に一回転させるはめになる。コンテナのドアが、ぎりぎりと開き、外は闇、だが新鮮な夜気が、こもった空気を洗い、二人は深く息を吸った。
それからお絵かきBBSの方に藤々さんからの頂き物をアップしています。ぜひご覧下さい。四枚の連作なので、小出しにさせていただきます(笑)
闇走る狼 続き
うめいてみたり、縛られた手足を必死に動かしてみても、いたずらに体力を消耗するばかりと悟ったティムは、荒い息を吐きながら、蒸せる暑さに耐えていた。
気持ちが少し落ち着いてくると、ティムは気づいた。かすかな、規則的な物音に。
それは生き物の息づかいに相違ない。ティムは寸時怯えたが、それが人のもの違いないとすぐに気づき、闇の中、視力の回復を待ちながら、重い木箱の向こう側から聞こえる呼吸の音に、耳を傾けた。
「誰かいるの?」
それは子どもの声だった。か細く小さな声だった。ティムは返事をすることができないが、塞がれた口から何とか声を漏らした。
箱の向こう側から、小さな頭がのぞいた。闇にまん丸な瞳だけが二つ光っている。コンテナの扉にはかすかに隙間がある。まだ外の陽は落ちていない。だから光は存在する。次第に少年の輪郭が、寝そべってもがくティムを見下ろす少年の顔が、ティムにしにんできるようなる。
丸顔で、幼い顔立ち。自分より二つくらい下かな、とティムは思った。
彼は手足を拘束されていない。口も塞がれていない。ティムは必死で、自分の手足の拘束や口のテープを剥がすように、動かぬ手足と言葉にならない声で訴えた。だが小さな少年は悲しげに首を振るばかりだった。この闇の中、ティムに見えるはずもなかったが、小さな少年の手首や足首にも縄の痕があり、その他の傷も、からだのあちこちにつけられていた。
ティムはなおも吠えるように訴え、少年を睨み、身を捩った。
やがてあきらめたように、身軽に箱を乗り越えた少年が、ティムの側にしゃがんで、ガムテープをゆっくりはがした。
「あ、痛た……」
「あ、ごめん」
「いや……」
ティムは頭を少し上げて、何とか笑ってみせる。
「縄……」
少年は首を振った。
「何でだよ? 手足さえ自由になればこんなとこ逃げてやる」
「外からぶっといかんぬきかかってるよ。絶対無理。でなきゃ僕が縛られてないわけないでしょ?」
確かにその通りだった。
「それに、逃げ損ねたら殺されるよ、たぶん」
少年は後ろを向き、何をするのかと思ったら粗末なシャツの背中をめくったのだった。見えない尻の部分まで、縦横に、やや治りかけであるが痛々しいみみず腫れがあった。木の枝か何かで、殴られたもののようだ。
そして、手のひらを見せると、右手の真ん中あたりに、三つの丸い瘢痕。これはタバコによるものだと、ティムにもわかった。
痛々しさが心にしみて、腹の底に重く不快な塊ができたように感じる。
「あいつら何だ? 俺達をどうする気なんだ?」
少年は首を振った。はっきりとはわからないと言う意味なのか、それとも絶望的な状況である、希望がないというNOの意味なのか……。
「夜の狼だよ」
「狼?」
「昔の日本では、子どもが突然いなくなると『カミカクシ』って言うんだって。神って言っても、妖怪とか天狗とか、何かの精霊のことみたいだけど。けどあいつらは、子どもをさらって、お金に換えるの。たぶんね」
噂は、ティムの村にも届いていたが、ティムは自分にはまるで関係のないことだと思っていた。その『夜の狼』に、自分が捕まるなんて。
「俺らがどうやって金に換わるって言うんだよ……」
「わかんない……わかんない……こわいんだ僕……」
少年が泣いている。自分も泣きたい。でも希望を捨てたわけじゃない。まだ何もわからないからだ。
「ねえ、名前は?」
「ベン……」
「俺、ティム。泣くなよ。あいつらが『夜の狼』だったら、俺達を殺して食うわけじゃないだろ。ほんとの獣みたいにさ。それじゃ金にならないもん。だったら、まだ助かる道があるかもしれないよ」
ベンは涙を拭いながら、うなずいた。
†
外の陽が落ちたのが幸い、コンテナの温度はずいぶん下がったが、日中に二人とも、かなりの水分を奪われていて、渇きに苦しんでいた。ベンがいつからコンテナに閉じこめられていたのかはわからないが、ティムより一日は長そうだった。むろんその間、食い物ものも飲み水も与えられなかったわけではあるまい。体の傷からすれば、それ以外のものもずいぶん与えられていたようだから。
トラックが大きく振動して、二人のからだはコンテナの前方に強く引きつけられた。後ろ手に拘束されているティムは、からだを前方に一回転させるはめになる。コンテナのドアが、ぎりぎりと開き、外は闇、だが新鮮な夜気が、こもった空気を洗い、二人は深く息を吸った。
¥12,800(税込) 某TV通販でご存知だと思うんですけど、楽天ランキング市場でも3部門でV3達成するなど、ほんと~~っに大人気。今… |
やばいです。精神的な意味では調子を取り戻してまずまずの生活をしていたんですが、張り切って掃除をしている最中にぎっくり腰をやらかしました。
過去二度、やってて、腰痛用のベルトを持ってたので、それをして、翌朝、すぐ近くの接骨院に行きました。
今もベルト無し、湿布の効果切れるとスローモーションでしか動けません。
まあスクラッチまでまだ日はあるので、無理しなければよくなるとは思います。
で、この中絶してた作品を、仕上げられれば短編本出せるな、っていうのを、ここに途中まで載せます。
「闇走る狼」――やみばしる、と読んで下さい。
闇走る狼
日本の経済が停滞して久しい中、アジアの諸国は活力に満ちた成長を続けている。少なくとも数字の上では、だが。
たかだか数十年の間に、人の人権意識も経済感覚も驚くほど様変わりするのは、日本人も経験してきたことだ。人身売買も貧しさ故の子殺しも、忘れてよいほど遠い昔のことではない。いつか来た道を戻ることもあるだろう。
幾度かの通貨危機や政変を経ながらも、このアジアの中堅国は、比較的安定した成長を続けてきた。だが今も、外貨獲得のためには性産業を切り捨てることができない。敬虔な仏教国でありながら。不思議なことに古くからゲイ天国でもあったこの国は、少年を買えることでも有名である。
少し前なら、親が平気で旅行者に子どもを売った。うちの子を一晩いくらで持って行け、と。それだけ、貧しい人が多かった。金さえあれば、ある種の人間にとっては、ここは天国、微笑みの国であった。
経済成長めざましい中で、そうした露骨なケースは少しずつ減り、また諸外国との関係上、国も児童売春を放置しているというスタンスはまずい。取り締まりも厳しくなった。だが、しぶとく生き残っている。アバウトさもこの国の特性だ。
首都近郊のめざましい近代化を尻目に、北部や山岳部の農村地帯などは、取り残されている。だが貧しかったが、平和でもあった。
富と繁栄に魅せられた者達は、あらゆるものに食いつく。都市部で調達できない子どもを、トラックで辺境を走り誘拐するのだ。拐かされた子の行く先に待つのは奴隷労働か、性の仕事か、それとも、臓器を奪われるのか。無力な者に逃れるすべなどない。
見知らぬトラックが乗りつけられると、子どもが消える。貧しくも静かであった村々は、それを『夜の狼』と呼んでおそれている。
†
蒸せる闇、ディーセルオイルの匂い、埃と土にまみれた床。時折激しい揺れが、後ろ手に縛られ、ガムテープで口を塞がれたティムのからだを、狭い空間の中で左右に転がす。
ティムは北東部の山裾の小さな村に暮らしていた。近隣の住民は、ほとんど自給自足に近い生活を送っている。小さな畑から採れる作物と、川魚。衣類やその他、何より車の燃料など、買い物が必要なときは、都市部に出て作物を売ったり、短期労働者として出稼ぎをし、家電品や衣類、燃料などを仕入れて、戻ってくる。
これらの出稼ぎ労働者には、少年少女も含まれている。彼らは、学校の休暇期間、都市部のそうした施設に身を預けてからだを売り、自分の小遣いを稼いだり、家計を助ける。そんな中には、大人の単純労働よりも桁の大きい収入と、都市部の享楽に惹きつけられ、次第に故郷から遠ざかる子どもも多い。
しかしながら、国の経済成長は、都市部の仕事の枠と給金をじりじりと引き上げており、そうなると遠方の街に子どもまで出稼ぎさせる親は、さすがに少なくなってくるのだった。
ティムは十一歳(この国の年齢は数えであるので、満では十歳)の誕生日を間近に控えた元気な少年で、乾季の爽やかな陽射しの下、網を構えて川縁で魚を狙っていた。日本人と対比すれば比較的小柄で、骨格もほっそりとしているのが、この国の主要な人種の平均的な体格だが、ティムは日本人の同年齢相応の身長と、がっしりした体格を持っていた。最も、思春期はまだ先の、幼い同年代の中ではの話だが。肌の色は、こんがり陽焼けした夏休みの日本人少年くらいだ。もっとも彼の場合、一皮剥けてもこの肌の色は変わらないし、尻の色も、同じである。彼は全裸で、川縁を左右に歩き、魚群を探していた。
ティムの家は比較的貧しかったが、年上のきょうだいが戦力になるので、通常は食うに困るようなことはなかった。それでもティムは、たまに学校を休んで家業を助けてはいたが。天候が荒れて作物がだめになったり家が壊れたりすると、たちまち家計は大ピンチになる、そんな危なっかしい経済状態だったが、ここらでは普通のことだ。
川縁からは見えない未舗装道路の車の音は、まばらだがティムの耳には届いていた。しかし彼には無関係なはずのことだったので、気にもとめなかった。
やせぎすで長身の男と、この国では少数派のビヤ樽みたいに太った体格の男が、早足で彼に近づいた。長身の男の方が、後ろからいきなり、彼を抱きかかえた。無論、ティムは背後の人の気配に気づいてはいたが、危険を感じる理由など彼にはなかったのだ。
「なにす……!」
ティムの正面に回った太った猪首の男が、ティムが言葉を発した瞬間に、みぞおちに大人の力で拳をねじ込んだ。息が詰まり、吐き気がする。その段階で、ティムは初めて危険を悟り、恐怖を全身で感じたが全ては遅かった。
陸に上がった魚のようにからだをねじり跳ねるように暴れるティムを抱える男の腕は鋼鉄の枷のように彼のからだをロックしている。大声を二度ほど上げようとしたら、太った男の拳と平手打ちが飛んできたので、ティムの抵抗心は、みるみる萎えてしまった。暗いコンテナに押し込まれる寸前、道路を見渡した。一日に十台二十台しか車の通らない道だから、彼が相当な幸運の持ち主であっても、のぞみはほとんどなかったし、実際、その希望はむなしかった。
ティムのいた河原に、思い出したように太った男が一人戻ってきた。あたりを見回して、ティムの残した漁具と、多少の収穫には目もくれず、彼の汚れたシャツとズボンを、拾い上げ翻ってトラックに戻っていく。
後に残されたカゴの中の川魚は、夕暮れまでには干からびてしまうか、烏の餌にでもなる他はない。
(続く)
【1本より送料無料・2本で代引き手数料も無料】通常販売価格5,040円(税込)のところ43%OFFの2...
過去二度、やってて、腰痛用のベルトを持ってたので、それをして、翌朝、すぐ近くの接骨院に行きました。
今もベルト無し、湿布の効果切れるとスローモーションでしか動けません。
まあスクラッチまでまだ日はあるので、無理しなければよくなるとは思います。
で、この中絶してた作品を、仕上げられれば短編本出せるな、っていうのを、ここに途中まで載せます。
「闇走る狼」――やみばしる、と読んで下さい。
闇走る狼
日本の経済が停滞して久しい中、アジアの諸国は活力に満ちた成長を続けている。少なくとも数字の上では、だが。
たかだか数十年の間に、人の人権意識も経済感覚も驚くほど様変わりするのは、日本人も経験してきたことだ。人身売買も貧しさ故の子殺しも、忘れてよいほど遠い昔のことではない。いつか来た道を戻ることもあるだろう。
幾度かの通貨危機や政変を経ながらも、このアジアの中堅国は、比較的安定した成長を続けてきた。だが今も、外貨獲得のためには性産業を切り捨てることができない。敬虔な仏教国でありながら。不思議なことに古くからゲイ天国でもあったこの国は、少年を買えることでも有名である。
少し前なら、親が平気で旅行者に子どもを売った。うちの子を一晩いくらで持って行け、と。それだけ、貧しい人が多かった。金さえあれば、ある種の人間にとっては、ここは天国、微笑みの国であった。
経済成長めざましい中で、そうした露骨なケースは少しずつ減り、また諸外国との関係上、国も児童売春を放置しているというスタンスはまずい。取り締まりも厳しくなった。だが、しぶとく生き残っている。アバウトさもこの国の特性だ。
首都近郊のめざましい近代化を尻目に、北部や山岳部の農村地帯などは、取り残されている。だが貧しかったが、平和でもあった。
富と繁栄に魅せられた者達は、あらゆるものに食いつく。都市部で調達できない子どもを、トラックで辺境を走り誘拐するのだ。拐かされた子の行く先に待つのは奴隷労働か、性の仕事か、それとも、臓器を奪われるのか。無力な者に逃れるすべなどない。
見知らぬトラックが乗りつけられると、子どもが消える。貧しくも静かであった村々は、それを『夜の狼』と呼んでおそれている。
†
蒸せる闇、ディーセルオイルの匂い、埃と土にまみれた床。時折激しい揺れが、後ろ手に縛られ、ガムテープで口を塞がれたティムのからだを、狭い空間の中で左右に転がす。
ティムは北東部の山裾の小さな村に暮らしていた。近隣の住民は、ほとんど自給自足に近い生活を送っている。小さな畑から採れる作物と、川魚。衣類やその他、何より車の燃料など、買い物が必要なときは、都市部に出て作物を売ったり、短期労働者として出稼ぎをし、家電品や衣類、燃料などを仕入れて、戻ってくる。
これらの出稼ぎ労働者には、少年少女も含まれている。彼らは、学校の休暇期間、都市部のそうした施設に身を預けてからだを売り、自分の小遣いを稼いだり、家計を助ける。そんな中には、大人の単純労働よりも桁の大きい収入と、都市部の享楽に惹きつけられ、次第に故郷から遠ざかる子どもも多い。
しかしながら、国の経済成長は、都市部の仕事の枠と給金をじりじりと引き上げており、そうなると遠方の街に子どもまで出稼ぎさせる親は、さすがに少なくなってくるのだった。
ティムは十一歳(この国の年齢は数えであるので、満では十歳)の誕生日を間近に控えた元気な少年で、乾季の爽やかな陽射しの下、網を構えて川縁で魚を狙っていた。日本人と対比すれば比較的小柄で、骨格もほっそりとしているのが、この国の主要な人種の平均的な体格だが、ティムは日本人の同年齢相応の身長と、がっしりした体格を持っていた。最も、思春期はまだ先の、幼い同年代の中ではの話だが。肌の色は、こんがり陽焼けした夏休みの日本人少年くらいだ。もっとも彼の場合、一皮剥けてもこの肌の色は変わらないし、尻の色も、同じである。彼は全裸で、川縁を左右に歩き、魚群を探していた。
ティムの家は比較的貧しかったが、年上のきょうだいが戦力になるので、通常は食うに困るようなことはなかった。それでもティムは、たまに学校を休んで家業を助けてはいたが。天候が荒れて作物がだめになったり家が壊れたりすると、たちまち家計は大ピンチになる、そんな危なっかしい経済状態だったが、ここらでは普通のことだ。
川縁からは見えない未舗装道路の車の音は、まばらだがティムの耳には届いていた。しかし彼には無関係なはずのことだったので、気にもとめなかった。
やせぎすで長身の男と、この国では少数派のビヤ樽みたいに太った体格の男が、早足で彼に近づいた。長身の男の方が、後ろからいきなり、彼を抱きかかえた。無論、ティムは背後の人の気配に気づいてはいたが、危険を感じる理由など彼にはなかったのだ。
「なにす……!」
ティムの正面に回った太った猪首の男が、ティムが言葉を発した瞬間に、みぞおちに大人の力で拳をねじ込んだ。息が詰まり、吐き気がする。その段階で、ティムは初めて危険を悟り、恐怖を全身で感じたが全ては遅かった。
陸に上がった魚のようにからだをねじり跳ねるように暴れるティムを抱える男の腕は鋼鉄の枷のように彼のからだをロックしている。大声を二度ほど上げようとしたら、太った男の拳と平手打ちが飛んできたので、ティムの抵抗心は、みるみる萎えてしまった。暗いコンテナに押し込まれる寸前、道路を見渡した。一日に十台二十台しか車の通らない道だから、彼が相当な幸運の持ち主であっても、のぞみはほとんどなかったし、実際、その希望はむなしかった。
ティムのいた河原に、思い出したように太った男が一人戻ってきた。あたりを見回して、ティムの残した漁具と、多少の収穫には目もくれず、彼の汚れたシャツとズボンを、拾い上げ翻ってトラックに戻っていく。
後に残されたカゴの中の川魚は、夕暮れまでには干からびてしまうか、烏の餌にでもなる他はない。
(続く)
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何だかどうにも、集中力を分断される状況でして、やりたいことが遅々として進みません。携帯メルマガの「次」は「少年の街」更新してからだ! と決めたんですがこれがなかなかw
ブログも数日更新してないんで、中途を載せておきます。
チビ玉とジョージ 6
チビ玉の口から、ベッと唾液と混じった精液が吐き出され、あごを伝って落ち、シーツにしみた。
その口を拭いながら頭を上げたチビ玉の視線が、ほんの一瞬ジョージと合う。そんな気もなく、そんな余裕もあるはずがなかったが、ジョージは自分を責める色をわずかそこに見た気がして、思わずうつむくのだった。
嗚咽を抑え込んで、すぐにチビ玉もうつむく。男の声は、途中からしか届かなかった。
「I feelin' good.You are realy nice boy. OK,now You can take a shower...」
チビ玉の頭を撫でながら、男は穏やかに話しかけていたが、通じなかったのはすぐにわかったのだろう。チビ玉の肩を軽く揺すりながら、ジョージにあごで合図をし、助けを求める。
「……チビ玉……。チビ玉。あのな、おっさんがもうシャワー浴びてええ言うとるねん」
ジョージの言葉の途中から、ゆっくりと手をついてからだを起こしたチビ玉は、飛び降りるようにベッドを離れ、床に足をつき、一度もジョージを見ずにバスルームによろよろと歩いていった。小さな尻の谷間から内股に、乾ききらないローションが流れ伸びていて、蛍光灯の光を、鈍くはね返すのだった。
バスルームのドアが、静かな部屋に大きな響きを残し閉じられる。間もなくシャワーの水音が聞こえた。
茫然としていたジョージの耳には、やはり男の声は途中からしか届かない。
「...Now your turn.We have long time till morning...Can you hear me? geoge?」
すり寄ってきた肩を引かれ、ようやくジョージはローションのついた自分の指を、チビ玉のアナルに押し込んでいた指をぼんやり見つめていた視線を、男の方に向ける。
男はソフトにジョージの肩を抱き、うつ伏せにさせた。
(We have long timeか……ショートやったらもう何とか言うて逃げるとこやったけど、無理やわな……)
あきらめて男の愛撫に任せていたジョージだったが、男の手指が彼のアナルを撫でさするに及んで、慌てて制止の手を突き出す。
「Ah,No...You don't fuck...」
「Yes,that's your job.」
男はジョージの言葉に言葉を重ねて、それから静かにくどくどと話し始めた。手はジョージのアナル周辺と肩を這い、軽く肉を握る。
要するにチビ玉のアナルセックスを拒否したのは、当然君が引き受けるということだろう? 朝まで時間がたっぷりあるのに、君たちは他にどんな仕事をしてくれるんだい、と、口調は穏やかであっても、結局は有無を言わせない感じを含ませて言うのだった。
ジョージは疲れ切っていた。普通は複数で一人の男の相手をすると、精神的にも肉体的にも負担は分散される。気の弱い、この街に慣れない客なら、ペースはこっちのものだ。しかし、ジョージは、チビ玉という対等のこれまでにない守りたい(守りたかった)、何も知らない少年を気遣い、初めての客であるこの大男にすっかりペースをにぎられ、まだ一、二時間というところで、くたくたになってしまっていた。
力を抜いて、少し足を開き、枕に頭を押しつけて。視界を闇に閉ざす。
男の指がアナルの襞をしばしもみほぐし、次には、ローションのついた指が、押しつけられ、こすりつけられる。必ずしも不快感とは言い難いその感覚に、ジョージのからだには鳥肌が走り、肩や足首に力がきゅっと入っては、からだを歪めた。
バスルームのドアが開く音がした。
てことでエロ展開が延々続きますw 土日までにはなんとかアップしたいです。
メルマガですが、お一方サブアドでのお申し込みで、うまく届いていないようです。詳細は連絡掲示板を参照して下さい。
サブアドでのお申し込みも全然問題ないですが、特に画像添付があるため、うまくいかない可能性もあります。あと、サービスの質が低くてメールが届くのが遅れる場合もありますね。そこらへんは、こちらでは一つ一つの検証は難しいですので、お申し込みの方の方で、サービスの内容を確認して下さい。
すでに有料のお申し込みもいただいているので、少年の街更新後、「次」を発行したいと思います。やりたいことはいっぱいあってもなかなか……です。
DLsite.com
ブログも数日更新してないんで、中途を載せておきます。
チビ玉とジョージ 6
チビ玉の口から、ベッと唾液と混じった精液が吐き出され、あごを伝って落ち、シーツにしみた。
その口を拭いながら頭を上げたチビ玉の視線が、ほんの一瞬ジョージと合う。そんな気もなく、そんな余裕もあるはずがなかったが、ジョージは自分を責める色をわずかそこに見た気がして、思わずうつむくのだった。
嗚咽を抑え込んで、すぐにチビ玉もうつむく。男の声は、途中からしか届かなかった。
「I feelin' good.You are realy nice boy. OK,now You can take a shower...」
チビ玉の頭を撫でながら、男は穏やかに話しかけていたが、通じなかったのはすぐにわかったのだろう。チビ玉の肩を軽く揺すりながら、ジョージにあごで合図をし、助けを求める。
「……チビ玉……。チビ玉。あのな、おっさんがもうシャワー浴びてええ言うとるねん」
ジョージの言葉の途中から、ゆっくりと手をついてからだを起こしたチビ玉は、飛び降りるようにベッドを離れ、床に足をつき、一度もジョージを見ずにバスルームによろよろと歩いていった。小さな尻の谷間から内股に、乾ききらないローションが流れ伸びていて、蛍光灯の光を、鈍くはね返すのだった。
バスルームのドアが、静かな部屋に大きな響きを残し閉じられる。間もなくシャワーの水音が聞こえた。
茫然としていたジョージの耳には、やはり男の声は途中からしか届かない。
「...Now your turn.We have long time till morning...Can you hear me? geoge?」
すり寄ってきた肩を引かれ、ようやくジョージはローションのついた自分の指を、チビ玉のアナルに押し込んでいた指をぼんやり見つめていた視線を、男の方に向ける。
男はソフトにジョージの肩を抱き、うつ伏せにさせた。
(We have long timeか……ショートやったらもう何とか言うて逃げるとこやったけど、無理やわな……)
あきらめて男の愛撫に任せていたジョージだったが、男の手指が彼のアナルを撫でさするに及んで、慌てて制止の手を突き出す。
「Ah,No...You don't fuck...」
「Yes,that's your job.」
男はジョージの言葉に言葉を重ねて、それから静かにくどくどと話し始めた。手はジョージのアナル周辺と肩を這い、軽く肉を握る。
要するにチビ玉のアナルセックスを拒否したのは、当然君が引き受けるということだろう? 朝まで時間がたっぷりあるのに、君たちは他にどんな仕事をしてくれるんだい、と、口調は穏やかであっても、結局は有無を言わせない感じを含ませて言うのだった。
ジョージは疲れ切っていた。普通は複数で一人の男の相手をすると、精神的にも肉体的にも負担は分散される。気の弱い、この街に慣れない客なら、ペースはこっちのものだ。しかし、ジョージは、チビ玉という対等のこれまでにない守りたい(守りたかった)、何も知らない少年を気遣い、初めての客であるこの大男にすっかりペースをにぎられ、まだ一、二時間というところで、くたくたになってしまっていた。
力を抜いて、少し足を開き、枕に頭を押しつけて。視界を闇に閉ざす。
男の指がアナルの襞をしばしもみほぐし、次には、ローションのついた指が、押しつけられ、こすりつけられる。必ずしも不快感とは言い難いその感覚に、ジョージのからだには鳥肌が走り、肩や足首に力がきゅっと入っては、からだを歪めた。
バスルームのドアが開く音がした。
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メルマガですが、お一方サブアドでのお申し込みで、うまく届いていないようです。詳細は連絡掲示板を参照して下さい。
サブアドでのお申し込みも全然問題ないですが、特に画像添付があるため、うまくいかない可能性もあります。あと、サービスの質が低くてメールが届くのが遅れる場合もありますね。そこらへんは、こちらでは一つ一つの検証は難しいですので、お申し込みの方の方で、サービスの内容を確認して下さい。
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タイトルで難産しましたが一応仮決定。どうも中学生日記のままだと「名が体を」表していない気がしまして。
で、文章最後まで書けちゃった(笑) 19000文字。我ながら速いです。推敲はしますが。
―――――
2
仙石君は、同級生や先輩に「悪い友達」をいつの間にかいっぱい作っていた。お金は、いくら言われても大して持っていけなかったけど、そのことを口実に、ぼくはトイレとか校舎の裏とか屋上とかで殴られた。あんまりきつくじゃない。ぼくが泣くのが面白いらしくて、だいたいそこまでが目的だ。
そのうち、屋上とか、部員のほとんどいない柔道部の部室とかが、ぼくを「じっくりおもちゃにする」場所になった。
そう、リーダー格はぼくに声をかけてきた柔道部の三年生で、山岸っていって体格だけじゃなく顔もいかつくて中学生のくせに無精ヒゲを生やしていた。
ぼくはズボンとパンツを脱がされて、ちいせえ、とかからかわれた。仙石がぼくのを揉んで大きくして、皮を剥いた。まだ痛いのに。
「くせー、お前風呂で洗ってねえな」とか言われる。
ぼくは真っ赤になって涙ぐむだけで、返事もできない。
電気アンマを、ぼくは下半身裸で、向こうは靴のままでやられた。何人もで交代で、誰かは携帯で動画とか写真を撮っている。それは、時々騒がしい授業中、ぼくの席に仙石君の仲間から回されてきた。たぶんかなりの生徒に、見られてしまっている。
靴での電気アンマは勃起とかどころじゃない。それこそ、ぼくの大きくもないちんちんが、さらに引っ込んでお腹の下にずんと来るくらい痛い。
けどそのあと、仙石君がねちねち汚れてしまったぼくのをいじって勃起させて、誰かに撮らせる。
ぼくはだんだん、ただただつらいことをされるためだけに、仙石君たちのおもちゃになるためだけに、生きているような気がしてきた。
いい加減寒くなってきた頃に、屋上で初めて上も脱がされて素っ裸にされた。靴と靴下だけで裸で立たされて、また写真撮られる。
四つん這いにされ、誰かに背中に乗られ、歩かされた。
「ほらブタ、遅えぞブタ!」
言われながら、お尻を叩かれる。
ぼくは、ぼくは……。その時、全身に恥ずかしさの血が駆け巡っていたのに、なぜか勃起した。誰にも気づかれたくない。何を言われるかわからない。
なのに……
誰かにお尻を、平手でなく、蹴られた。そして姿勢が崩れた。
「あ、もしかしてこいつ勃ってるかも」
「マジで? マゾ? マゾブタこいつ?」
「いじめられてくせになってきたんじゃねえの?」
「見せて見せて」
ゼツボウってやつだった。頭がくらくらして、全身熱くてもうダメだ。背中に乗っていた誰かが降りて、ぼくは誰かの足でからだをひっくり返された。
「おー、びんびん。このくらいの大きさにはなるんだねえ」
ぼくは素っ裸で、コンクリートの床に背中つけて、足を開いてみんなに見られている。誰か、携帯で撮影している。
誰かがぼくのを靴のまま踏んだ。仙石君だった。
「出すと思う?」
「靴で? それで出したらマジ変態」
「いやすでに変態だよね」
「だねー」
仙石君の靴は、ぼくのを軽く踏んで前後左右とか円を描くように動いて、強く踏み込んでこなかった。だからぼくのは縮まなかった。
「やめて……やめてもう……」
ぼくはべそをかきながら言った。めったに言わない。いつもぼくは、一応ちょっ抵抗したりいやだっていう顔はするけど、何かをはっきり断ったり、いやだだめだって言うことができないんだ。
……ダメだ……寒いのに背中痛いのに、恥ずかしいのに……ちんちん熱い。いてもたってもいられない。
「あ……」
ぼくは白いのを漏らした。仙石君の靴の裏にそれはついた。ぼくが出した粘っこいのは仙石君の靴でぼくのお腹にこすりつけられた。黒い泥と、ぼくの精液で汚れたおなかは、ぼくの視線のすぐそばで、上下していて、涙に曇っていった。
―――――
八章まであるんで主人公(暢平君といいます)の地獄は延々と続きますが、タイトルの意味するところは……、ってあたりですね。
ちなみにこのタイトル、レッドツェッペリンの名曲から言葉だけ頂戴しました。歌詞とか曲想と小説の中身は全く関係ありません(笑) ファンの人怒らないでね。
余談ですが歌詞を確認しようとしてひっかかったYouTubeのライブ映像があまりに素晴らしくてさっきから無限ループで再生しています。10:26のバージョンです。好きな人は必見かも。
かに問屋 札幌蟹販
で、文章最後まで書けちゃった(笑) 19000文字。我ながら速いです。推敲はしますが。
―――――
2
仙石君は、同級生や先輩に「悪い友達」をいつの間にかいっぱい作っていた。お金は、いくら言われても大して持っていけなかったけど、そのことを口実に、ぼくはトイレとか校舎の裏とか屋上とかで殴られた。あんまりきつくじゃない。ぼくが泣くのが面白いらしくて、だいたいそこまでが目的だ。
そのうち、屋上とか、部員のほとんどいない柔道部の部室とかが、ぼくを「じっくりおもちゃにする」場所になった。
そう、リーダー格はぼくに声をかけてきた柔道部の三年生で、山岸っていって体格だけじゃなく顔もいかつくて中学生のくせに無精ヒゲを生やしていた。
ぼくはズボンとパンツを脱がされて、ちいせえ、とかからかわれた。仙石がぼくのを揉んで大きくして、皮を剥いた。まだ痛いのに。
「くせー、お前風呂で洗ってねえな」とか言われる。
ぼくは真っ赤になって涙ぐむだけで、返事もできない。
電気アンマを、ぼくは下半身裸で、向こうは靴のままでやられた。何人もで交代で、誰かは携帯で動画とか写真を撮っている。それは、時々騒がしい授業中、ぼくの席に仙石君の仲間から回されてきた。たぶんかなりの生徒に、見られてしまっている。
靴での電気アンマは勃起とかどころじゃない。それこそ、ぼくの大きくもないちんちんが、さらに引っ込んでお腹の下にずんと来るくらい痛い。
けどそのあと、仙石君がねちねち汚れてしまったぼくのをいじって勃起させて、誰かに撮らせる。
ぼくはだんだん、ただただつらいことをされるためだけに、仙石君たちのおもちゃになるためだけに、生きているような気がしてきた。
いい加減寒くなってきた頃に、屋上で初めて上も脱がされて素っ裸にされた。靴と靴下だけで裸で立たされて、また写真撮られる。
四つん這いにされ、誰かに背中に乗られ、歩かされた。
「ほらブタ、遅えぞブタ!」
言われながら、お尻を叩かれる。
ぼくは、ぼくは……。その時、全身に恥ずかしさの血が駆け巡っていたのに、なぜか勃起した。誰にも気づかれたくない。何を言われるかわからない。
なのに……
誰かにお尻を、平手でなく、蹴られた。そして姿勢が崩れた。
「あ、もしかしてこいつ勃ってるかも」
「マジで? マゾ? マゾブタこいつ?」
「いじめられてくせになってきたんじゃねえの?」
「見せて見せて」
ゼツボウってやつだった。頭がくらくらして、全身熱くてもうダメだ。背中に乗っていた誰かが降りて、ぼくは誰かの足でからだをひっくり返された。
「おー、びんびん。このくらいの大きさにはなるんだねえ」
ぼくは素っ裸で、コンクリートの床に背中つけて、足を開いてみんなに見られている。誰か、携帯で撮影している。
誰かがぼくのを靴のまま踏んだ。仙石君だった。
「出すと思う?」
「靴で? それで出したらマジ変態」
「いやすでに変態だよね」
「だねー」
仙石君の靴は、ぼくのを軽く踏んで前後左右とか円を描くように動いて、強く踏み込んでこなかった。だからぼくのは縮まなかった。
「やめて……やめてもう……」
ぼくはべそをかきながら言った。めったに言わない。いつもぼくは、一応ちょっ抵抗したりいやだっていう顔はするけど、何かをはっきり断ったり、いやだだめだって言うことができないんだ。
……ダメだ……寒いのに背中痛いのに、恥ずかしいのに……ちんちん熱い。いてもたってもいられない。
「あ……」
ぼくは白いのを漏らした。仙石君の靴の裏にそれはついた。ぼくが出した粘っこいのは仙石君の靴でぼくのお腹にこすりつけられた。黒い泥と、ぼくの精液で汚れたおなかは、ぼくの視線のすぐそばで、上下していて、涙に曇っていった。
―――――
八章まであるんで主人公(暢平君といいます)の地獄は延々と続きますが、タイトルの意味するところは……、ってあたりですね。
ちなみにこのタイトル、レッドツェッペリンの名曲から言葉だけ頂戴しました。歌詞とか曲想と小説の中身は全く関係ありません(笑) ファンの人怒らないでね。
余談ですが歌詞を確認しようとしてひっかかったYouTubeのライブ映像があまりに素晴らしくてさっきから無限ループで再生しています。10:26のバージョンです。好きな人は必見かも。
かに問屋 札幌蟹販
風邪気味です。いいタイトルが思い浮かばなくて、とりあえずこれで短編書いています。
ところが……
藤々さんのでぶっ子イラにSSつける程度のはずが、何か長くなってきて、さらには、今回東京だから荷物送らなきゃいけないよね、じゃあ、締め切りは、って考えたら、間に合わない気がしてきました(汗
まあ間に合わなきゃ間に合わないで、CUTEと同じラインナップでいきますが……
――――
裏版・中学生日記(仮題)
1
六年生の時から、ぼくが上がる中学校にいい噂はなかった。
だから勉強のできる子とか、お金持ちの子は、私立の学校を受験する。ただテレビのニュースでワイロの話がたまに出るけど、お金で私立の中学校に入れるってことは、そんなにはないらしい。コネとかいって、家のお父さんが偉い社長さんとかお医者さんで、学校を経営してる人と知り合い、とかだとまた違うらしいけど。
ともかく、中学校に上がる時に、勉強ができて、家の親もしっかりしてるところから、ごっそり抜けてしまった。クラスで上から五人抜けたら大きい。
小学校三つが一つの中学校に固まって、入学式を迎えた時は、新しい学ラン着て、古いランドセルにさよならして、少しは希望もあるかもって思った。けれど、新一年の、前向きでいい雰囲気ってのは、夏休み前後で早くも崩れてしまった。成り立つ授業がほとんどなくて、まじめな子もやる気をなくしてしまう。ぼくは大人しく座ってるけど、もともと勉強できないし、騒々しくて余計わけわかんなくなった。他の子みたいに塾も嫌だし、もう何もやる気がしない。
ぼーっとしているうちにぼくは新しい友達を作り損ねていた。以前の学校からの遊び友達で、けっこう頭がよかった仙石君は、私立に落ちてこの学校に上がってから、何だか話しかけにくくなっていた。
そんなある日の昼休みのことだった。
ぼくは廊下で、とてもからだの大きい先輩に、声をかけられた。
「あ、ねえ君一年生?」
「え、あ、はい? そうですけど……」
「いい体格してるね。柔道部に入らない?」
…………。
ぼくは太っている。でも背は低いし、運動音痴だし、筋肉がついているわけじゃない。何だかバカにされた気もして、腹が立つより屈辱って感じがしてうつむいた。
先輩は勝手にしゃべってるんだけど、どうも辞める部員が多くて、公式戦に参加できなくなりそうだから、頭数だけでいいから入って欲しいとかいう話だ。無理だ無理だと言ってもしつこい。第一そんなに人数が少ないのなら、ぼくも試合に引っ張り出されるんじゃないだろうか。柔道着買わされて、人前で痛い目に遭わされて笑いものなんていくらなんでも嫌だ。
そのうち、ぼくのもごもごした物言いの何かが気に入らなかったようで、ぼくは先輩に襟首をつかまれた。こわい。
そこに、仙石君が通りかかった。
親しげに先輩に話している。
「ああ、こいつ運動無理ですよ。ぼく誰か捜しますから、放してやってくださいよ」
仙石君も軽くぼくをバカにしているけど、助けてくれた。先輩はぼくの頭を軽く小突くようにして、背中を向けて去っていった。
「……ありがとう……」
「この肉じゃ運動部向きじゃないよな」
ぼくはお腹の肉をつかまれた。何も言えなかった。仙石君はぼくを廊下の壁に押しつけて、しつこくお腹を揉んで、胸もつかんだ。
「女みたいな胸だよなお前」
嘲笑っていた。同じようなことを、五年の頃六年の何人かに囲まれてされたり言われた時は、助けてくれたのに。
「毛生えた?」
笑いながらぼくの股間をぎゅっとつかむので、さすがにぼくはその手首を握ってずらして、もう一方の手で股間をガードした。へっぴり腰になっていた。
そのぼくを抱くように仙石君の手がぼくのお尻に回って、ヒップポケットから財布を抜かれた。
「あ……」
「助けてやったんだからこのくらいいいだろ? じゃあまたな」
財布には七百円しか入っていないけど、今月のぼくの小遣いはそれと家に二百円くらいだけだ。それでもぼくは、返してくれと言えなかった。それが間違いだってことはその時わかっていたし、全ての始まりになってしまったことは、あとからすごく後悔したけれど、できないものはできないし、後悔しても、何もかも手遅れだった。
――――
本家中学生日記の、野球部のコーチに性的いたずらをされる男子生徒のエピソードは、実態を知る「当事者」の失笑をこれでもかと買いまくる出来である意味伝説になりましたが、はるか昔の「やつのパンツを狙え」はなかなかの出来でした。
羽交い締めにされてズボンとパンツを抜き取られるでぶっ子を、上からのアングルで撮影していて、上が学ランなのでうまい具合に映さずにモロ出しを表現していましたね。半べそのでぶっ子の表情もいい感じでした(どっかのショタサイトの記事でいやがってない表情に見えるとか書いてた人は目が歪んでいますなw)。
ただ後年キャプ動画を見たら、ちょっと記憶と違ってあまり好みの子ではなかったのですが……(笑) まあネタだけでも大したものです。
この作品はそれにインスパイアされ……たのでは全然なく、あくまで藤々さんのイラストにつけるSSの構想から膨らんだものですが、「中学生のでぶっ子、性的いじめ」の連想でとりあえずタイトルを頂戴してきました。
ま、この第一章ではまだそのいじめのシーンないんですけどw
ところが……
藤々さんのでぶっ子イラにSSつける程度のはずが、何か長くなってきて、さらには、今回東京だから荷物送らなきゃいけないよね、じゃあ、締め切りは、って考えたら、間に合わない気がしてきました(汗
まあ間に合わなきゃ間に合わないで、CUTEと同じラインナップでいきますが……
――――
裏版・中学生日記(仮題)
1
六年生の時から、ぼくが上がる中学校にいい噂はなかった。
だから勉強のできる子とか、お金持ちの子は、私立の学校を受験する。ただテレビのニュースでワイロの話がたまに出るけど、お金で私立の中学校に入れるってことは、そんなにはないらしい。コネとかいって、家のお父さんが偉い社長さんとかお医者さんで、学校を経営してる人と知り合い、とかだとまた違うらしいけど。
ともかく、中学校に上がる時に、勉強ができて、家の親もしっかりしてるところから、ごっそり抜けてしまった。クラスで上から五人抜けたら大きい。
小学校三つが一つの中学校に固まって、入学式を迎えた時は、新しい学ラン着て、古いランドセルにさよならして、少しは希望もあるかもって思った。けれど、新一年の、前向きでいい雰囲気ってのは、夏休み前後で早くも崩れてしまった。成り立つ授業がほとんどなくて、まじめな子もやる気をなくしてしまう。ぼくは大人しく座ってるけど、もともと勉強できないし、騒々しくて余計わけわかんなくなった。他の子みたいに塾も嫌だし、もう何もやる気がしない。
ぼーっとしているうちにぼくは新しい友達を作り損ねていた。以前の学校からの遊び友達で、けっこう頭がよかった仙石君は、私立に落ちてこの学校に上がってから、何だか話しかけにくくなっていた。
そんなある日の昼休みのことだった。
ぼくは廊下で、とてもからだの大きい先輩に、声をかけられた。
「あ、ねえ君一年生?」
「え、あ、はい? そうですけど……」
「いい体格してるね。柔道部に入らない?」
…………。
ぼくは太っている。でも背は低いし、運動音痴だし、筋肉がついているわけじゃない。何だかバカにされた気もして、腹が立つより屈辱って感じがしてうつむいた。
先輩は勝手にしゃべってるんだけど、どうも辞める部員が多くて、公式戦に参加できなくなりそうだから、頭数だけでいいから入って欲しいとかいう話だ。無理だ無理だと言ってもしつこい。第一そんなに人数が少ないのなら、ぼくも試合に引っ張り出されるんじゃないだろうか。柔道着買わされて、人前で痛い目に遭わされて笑いものなんていくらなんでも嫌だ。
そのうち、ぼくのもごもごした物言いの何かが気に入らなかったようで、ぼくは先輩に襟首をつかまれた。こわい。
そこに、仙石君が通りかかった。
親しげに先輩に話している。
「ああ、こいつ運動無理ですよ。ぼく誰か捜しますから、放してやってくださいよ」
仙石君も軽くぼくをバカにしているけど、助けてくれた。先輩はぼくの頭を軽く小突くようにして、背中を向けて去っていった。
「……ありがとう……」
「この肉じゃ運動部向きじゃないよな」
ぼくはお腹の肉をつかまれた。何も言えなかった。仙石君はぼくを廊下の壁に押しつけて、しつこくお腹を揉んで、胸もつかんだ。
「女みたいな胸だよなお前」
嘲笑っていた。同じようなことを、五年の頃六年の何人かに囲まれてされたり言われた時は、助けてくれたのに。
「毛生えた?」
笑いながらぼくの股間をぎゅっとつかむので、さすがにぼくはその手首を握ってずらして、もう一方の手で股間をガードした。へっぴり腰になっていた。
そのぼくを抱くように仙石君の手がぼくのお尻に回って、ヒップポケットから財布を抜かれた。
「あ……」
「助けてやったんだからこのくらいいいだろ? じゃあまたな」
財布には七百円しか入っていないけど、今月のぼくの小遣いはそれと家に二百円くらいだけだ。それでもぼくは、返してくれと言えなかった。それが間違いだってことはその時わかっていたし、全ての始まりになってしまったことは、あとからすごく後悔したけれど、できないものはできないし、後悔しても、何もかも手遅れだった。
――――
本家中学生日記の、野球部のコーチに性的いたずらをされる男子生徒のエピソードは、実態を知る「当事者」の失笑をこれでもかと買いまくる出来である意味伝説になりましたが、はるか昔の「やつのパンツを狙え」はなかなかの出来でした。
羽交い締めにされてズボンとパンツを抜き取られるでぶっ子を、上からのアングルで撮影していて、上が学ランなのでうまい具合に映さずにモロ出しを表現していましたね。半べそのでぶっ子の表情もいい感じでした(どっかのショタサイトの記事でいやがってない表情に見えるとか書いてた人は目が歪んでいますなw)。
ただ後年キャプ動画を見たら、ちょっと記憶と違ってあまり好みの子ではなかったのですが……(笑) まあネタだけでも大したものです。
この作品はそれにインスパイアされ……たのでは全然なく、あくまで藤々さんのイラストにつけるSSの構想から膨らんだものですが、「中学生のでぶっ子、性的いじめ」の連想でとりあえずタイトルを頂戴してきました。
ま、この第一章ではまだそのいじめのシーンないんですけどw
4
ルミネスの十二階、業務用エレベーターががくんと音を立てて止まると、チビ玉は壁の方に飛ばされそうになって腰を下げた。その低い位置の手に、ジョージの手が伸びてきて、チビ玉はそれを握る。薄いブルーの作業着を着た清掃作業員は、振り向きもせず背中に手を回して、二人を手招きする。
深紅の短毛絨毯は足音を響かせない。廊下を折れ、清掃作業員は、
「1214」
と廊下の奥を指さしてひと言言うと、背中に手を伸ばす。ジョージがチップを握らせると、そのまま踵を返してエレベーターの方に戻った。互いに一度も顔を見ていない。これはいざとなればなかったことになるのだから、それでいいのだろう。
1214号室のドアをノックする。ドアが細く開き、ロックバー(ドアチェーンと同じ働きだがより丈夫なもの)が外され、静かにドアが開いた。
あらためて見上げるに、このドアから入れたかと思うほどの巨魁だった。
カクテルグラスを大きな手につまんでおり、ピンク色の酒が少量残っていた。髪は白髪というか銀、眉も薄いが同じ色で、えらの張った体格の割りにしても大きな顔はブルドッグを思わせる。白い肌は酒に朱に染められていた。廊下の絨毯に似た臙脂色のガウンを着ており、胸はもじゃもじゃの毛で覆われている。この距離でも体臭は強烈だった。ジョージはもちろんロシア人の相手をするのは初めてではないが、大概、三、四十分は獣じみた体臭と戦うのに必死で、いくら触られても勃起どころではないくらいで、最初の頃はあとに頭痛が残ったものだ。
臭いのせいか定かではないが、チビ玉は顔をしかめてジョージの後ろに隠れてしまった。
「Hello,I long long for your comming. ……Come in,Come in!! Hurry!」
ジョージの肩を引き寄せ、逃げ腰のチビ玉の小さな手を引く男。二人を導き入れ、ドアを閉める。電子式のオートロックが作動した。チビ玉はその発振音に、何か恐怖をかきたてられた。
「Ah... My name is George. Nice to meet you.」
「Oh you so nice! is he ...?」
男はジョージの手を強く握って振り、続いて軽くハグすると、少し横に寄らせ、腰の引けたチビ玉の手を、本人にその気はないのかもしれないが無理に引っぱった。枯れ枝を噛む狼の口のような手だった。
「Ah... He is new boy,So he still doesn't have nick name in this town.Call him ah... チビ……玉」
誰かが彼をそう呼んでいた。ジョージはチビとかおいチビとかしか言っていなかったが、とっさにその名前が口から出た。
「Chubby? Oh he is not...」
「No, No, チビ means little, shorty, tiny ...in Japanese.」
「Oh I see! Just tiny! So cute!」
ロシア人は満面に笑みを浮かべるとチビ玉の脇に手を差し入れ、軽々と持ち上げた。一瞬足をばたつかせたチビ玉だったが、ジョージが優しく目線を送ったので大人しくなる。チビ玉はそのまま男に運ばれ、ジョージはそれについていって、ほぼ正方形の大きなダブルベッドの片端に並んで座らされた。部屋はダブルベッドが小さく見えるほど広く軽く十畳はあって、これも正方形に近い。窓側は広いヴェランダになっている。バスルームは入り口の横というつくりだ。
「チビ……玉。とりあえずこいつに嫌そうな顔見せたらあかんで。どうしても嫌やったら俺に合図せい。ええな?」
「何でチビ玉なん?」
小声の早口で合図を送っているというのにとぼけた返事が返ってきたのでジョージはいらついた。
「ええから! わかったんかいな?」
「うんがんばる。でもあの人くさい」
「日本語わかるかもしれんにゃぞボケ!」
囁きながらも、チビ玉の罪のない愛嬌にジョージは何となく反応してしまう。もともと、ゲイの気はなかった彼だったが……。
やはり男の主目的はチビ玉の方である。まずベッドに座らせたまま唇をついばんだ。チビ玉が顔をしかめたのは一瞬のことで、すぐに男のまねをして舌を突き出し、男と舌をつきあわせる。
男はジョージそっちのけでチビ玉をベッドに押し倒した。ジョージはベッドに上がって、男の背後からチビ玉の顔が見える位置に這って移動する。
濃厚に唇が吸われていた。解放され、男が一枚きりのシャツに両手を差し入れ、首筋を舐めている時、やっと表情がよく見えたが、ひきつって目には涙が浮かんでいた。俺が感じるべきものじゃないと思っても、胸の痛みと罪悪感に、ジョージは責められる。
シャツが脱がされ、やせてちっぽけなからだが、毛むくじゃらの太い肉の塊に埋もれる。
男がチビ玉に何か言ったが、チビ玉には聞く余裕もなければ、あっても意味は通じなかったろう。ただ手首を握られて怯えていた。
男が振り返り、ジョージを見た。額には汗がにじみ、青い眼は誰かが死んだ魚のようだと言ったが、恐ろしかった。
乳首を触れと、チビ玉に伝えろと、男は言うのだった。
「チビ……あのな、この人の乳首、こそばしたりつまんだりするねん。……重いか? 優しくするように言うたろか?」
「……大丈夫……」
あまり大丈夫な感じでもないが、この程度で客に余計なことを言ったら、かえって刺激しそうだ。がんばってもらうしかない。
チビ玉はおぼつかない手つきで、男の乳首をまさぐっている。男の口から歯が見えた。笑ったのだろう。
男は暑くてたまらないとでもいうようにガウンを脱ぎ捨て、チビ玉の下履きをも抜き取った。そしてジョージに裸になるように命じ、二人は全裸でベッドに並ばされ、そして手を繋がされた。
どういうわけかジョージは股間が反応気味で、いつにない恥ずかしさを味わった。ジョージの、皮かぶりだが大きさは大人に近いそれに比べれば、チビ玉のは小指の先のような幼さだった。
男は大きな部屋備え付けのバスタオルで全身の汗をぬぐい、一応それを腰に巻くと、カメラを取り出し、並んだ二人を数枚撮影した。
「撮影は別料金を請求しよう」とジョージは脳内にメモする。
――――
さて、サイトの文章の更新がだいぶないので、半分ですが「チビ玉とジョージ」の4章を公開します。
この後はなるべくしてエロシーンが激しく濃く続くのですが(笑)たぶん長く、途中で切れて場面が変わるか、5まで続く、って感じです。
さらに後追い更新ですが携帯版でも「チビ玉とジョージ」の連載を開始しました。といってもDSV完成のメドがつくまではまったり更新、というのは申し上げ続けている通りです。
この二日ぐらいは集中力が戻って動き出せば作業能率はいいですが、どうにも活動時間が短いですね。眠いだるいで動けない時間が長いので。でも集中できて文章がノッってくるとその時間は楽しいので、それを糧にちょっとずつ上げていきたいなと。
ルミネスの十二階、業務用エレベーターががくんと音を立てて止まると、チビ玉は壁の方に飛ばされそうになって腰を下げた。その低い位置の手に、ジョージの手が伸びてきて、チビ玉はそれを握る。薄いブルーの作業着を着た清掃作業員は、振り向きもせず背中に手を回して、二人を手招きする。
深紅の短毛絨毯は足音を響かせない。廊下を折れ、清掃作業員は、
「1214」
と廊下の奥を指さしてひと言言うと、背中に手を伸ばす。ジョージがチップを握らせると、そのまま踵を返してエレベーターの方に戻った。互いに一度も顔を見ていない。これはいざとなればなかったことになるのだから、それでいいのだろう。
1214号室のドアをノックする。ドアが細く開き、ロックバー(ドアチェーンと同じ働きだがより丈夫なもの)が外され、静かにドアが開いた。
あらためて見上げるに、このドアから入れたかと思うほどの巨魁だった。
カクテルグラスを大きな手につまんでおり、ピンク色の酒が少量残っていた。髪は白髪というか銀、眉も薄いが同じ色で、えらの張った体格の割りにしても大きな顔はブルドッグを思わせる。白い肌は酒に朱に染められていた。廊下の絨毯に似た臙脂色のガウンを着ており、胸はもじゃもじゃの毛で覆われている。この距離でも体臭は強烈だった。ジョージはもちろんロシア人の相手をするのは初めてではないが、大概、三、四十分は獣じみた体臭と戦うのに必死で、いくら触られても勃起どころではないくらいで、最初の頃はあとに頭痛が残ったものだ。
臭いのせいか定かではないが、チビ玉は顔をしかめてジョージの後ろに隠れてしまった。
「Hello,I long long for your comming. ……Come in,Come in!! Hurry!」
ジョージの肩を引き寄せ、逃げ腰のチビ玉の小さな手を引く男。二人を導き入れ、ドアを閉める。電子式のオートロックが作動した。チビ玉はその発振音に、何か恐怖をかきたてられた。
「Ah... My name is George. Nice to meet you.」
「Oh you so nice! is he ...?」
男はジョージの手を強く握って振り、続いて軽くハグすると、少し横に寄らせ、腰の引けたチビ玉の手を、本人にその気はないのかもしれないが無理に引っぱった。枯れ枝を噛む狼の口のような手だった。
「Ah... He is new boy,So he still doesn't have nick name in this town.Call him ah... チビ……玉」
誰かが彼をそう呼んでいた。ジョージはチビとかおいチビとかしか言っていなかったが、とっさにその名前が口から出た。
「Chubby? Oh he is not...」
「No, No, チビ means little, shorty, tiny ...in Japanese.」
「Oh I see! Just tiny! So cute!」
ロシア人は満面に笑みを浮かべるとチビ玉の脇に手を差し入れ、軽々と持ち上げた。一瞬足をばたつかせたチビ玉だったが、ジョージが優しく目線を送ったので大人しくなる。チビ玉はそのまま男に運ばれ、ジョージはそれについていって、ほぼ正方形の大きなダブルベッドの片端に並んで座らされた。部屋はダブルベッドが小さく見えるほど広く軽く十畳はあって、これも正方形に近い。窓側は広いヴェランダになっている。バスルームは入り口の横というつくりだ。
「チビ……玉。とりあえずこいつに嫌そうな顔見せたらあかんで。どうしても嫌やったら俺に合図せい。ええな?」
「何でチビ玉なん?」
小声の早口で合図を送っているというのにとぼけた返事が返ってきたのでジョージはいらついた。
「ええから! わかったんかいな?」
「うんがんばる。でもあの人くさい」
「日本語わかるかもしれんにゃぞボケ!」
囁きながらも、チビ玉の罪のない愛嬌にジョージは何となく反応してしまう。もともと、ゲイの気はなかった彼だったが……。
やはり男の主目的はチビ玉の方である。まずベッドに座らせたまま唇をついばんだ。チビ玉が顔をしかめたのは一瞬のことで、すぐに男のまねをして舌を突き出し、男と舌をつきあわせる。
男はジョージそっちのけでチビ玉をベッドに押し倒した。ジョージはベッドに上がって、男の背後からチビ玉の顔が見える位置に這って移動する。
濃厚に唇が吸われていた。解放され、男が一枚きりのシャツに両手を差し入れ、首筋を舐めている時、やっと表情がよく見えたが、ひきつって目には涙が浮かんでいた。俺が感じるべきものじゃないと思っても、胸の痛みと罪悪感に、ジョージは責められる。
シャツが脱がされ、やせてちっぽけなからだが、毛むくじゃらの太い肉の塊に埋もれる。
男がチビ玉に何か言ったが、チビ玉には聞く余裕もなければ、あっても意味は通じなかったろう。ただ手首を握られて怯えていた。
男が振り返り、ジョージを見た。額には汗がにじみ、青い眼は誰かが死んだ魚のようだと言ったが、恐ろしかった。
乳首を触れと、チビ玉に伝えろと、男は言うのだった。
「チビ……あのな、この人の乳首、こそばしたりつまんだりするねん。……重いか? 優しくするように言うたろか?」
「……大丈夫……」
あまり大丈夫な感じでもないが、この程度で客に余計なことを言ったら、かえって刺激しそうだ。がんばってもらうしかない。
チビ玉はおぼつかない手つきで、男の乳首をまさぐっている。男の口から歯が見えた。笑ったのだろう。
男は暑くてたまらないとでもいうようにガウンを脱ぎ捨て、チビ玉の下履きをも抜き取った。そしてジョージに裸になるように命じ、二人は全裸でベッドに並ばされ、そして手を繋がされた。
どういうわけかジョージは股間が反応気味で、いつにない恥ずかしさを味わった。ジョージの、皮かぶりだが大きさは大人に近いそれに比べれば、チビ玉のは小指の先のような幼さだった。
男は大きな部屋備え付けのバスタオルで全身の汗をぬぐい、一応それを腰に巻くと、カメラを取り出し、並んだ二人を数枚撮影した。
「撮影は別料金を請求しよう」とジョージは脳内にメモする。
――――
さて、サイトの文章の更新がだいぶないので、半分ですが「チビ玉とジョージ」の4章を公開します。
この後はなるべくしてエロシーンが激しく濃く続くのですが(笑)たぶん長く、途中で切れて場面が変わるか、5まで続く、って感じです。
さらに後追い更新ですが携帯版でも「チビ玉とジョージ」の連載を開始しました。といってもDSV完成のメドがつくまではまったり更新、というのは申し上げ続けている通りです。
この二日ぐらいは集中力が戻って動き出せば作業能率はいいですが、どうにも活動時間が短いですね。眠いだるいで動けない時間が長いので。でも集中できて文章がノッってくるとその時間は楽しいので、それを糧にちょっとずつ上げていきたいなと。
3
例のロシア人が泊まっているのは「ルミネス」という名のアメリカンスタイルのリゾートホテルだ。ただしなぜか、オーナーはイスラム系という不思議だ。
そこは普段、少年達をショートで買う男達がこそこそと泊まりこそこそと消えるホテルとは少し違う。
もっとも、十五歳以上の少年なら、地下駐車場からエレベーターに乗り、顧客の部屋に直行できる。そのことは、ホテルオーナーは知らないことになっている。警察機関とは、袖の下を握り合って話はつけてあるのだ。
ただ、チビ玉のように、十歳以下にしか見えない、身分証もないみすぼらしいみなりの少年、そしてそれを引率するのも、十五で通らないことはないが実際は十四くらいで、これも身分証のないジョージとあっては、これも効かない。
こういう場合、押しのきく、お得意さんの客だけが例外的なわがままを通すことができる。ホテルに一ヶ月以上何度も連続滞在している。その間あらゆる意味でZに金をばらまいている、おおむね街で無茶をせず地元の大人子どもに嫌われていない、など。
こうした客は、ほとんどあらゆるわがままがきく。チビ玉を部屋に入れるのも、例外的手法で、従業員用入り口、従業員用エレベーターを通り、それを案内する清掃員に、客からママに、ママからジョージへと預けられたチップを渡し、部屋にたどり着ける。
アメリカンスタイルのホテルは、重厚さや雰囲気に欠ける面はあるが、グレードの高いリゾートホテルなので、どこも清潔で明るい。
チビ玉の、場違いさへの戸惑い、不安、怯えが、ジョージには痛いほど伝わった。
†
「しごと……?」
眠い目をこすりながら自分を見上げる幼い少年から何となくふっと目をそらし、ジョージはかすかな胸の痛みを感じた。
Zに流れてくる少年達は、あらかじめ大概、「仕事」の内容を知っている。無論SEXそのものについての知識がおぼろげな段階だとそれなりだが、女性で言えばお尻を触られてなんぼ、キスされてなんぼの水商売の世界だということぐらいは、わかっているものだ。中学生くらいの年齢なら、すでに「仲間」が経験済みであったりで、仕事の中身の把握は、知識の上ではほぼ正確なものだ。ただ知識と実践、実際の《感覚》には相当なギャップがあり、最初の一回目で泣いて逃げ出す子も多い。逃げることが可能な子の場合はであるが。
ことに先進国の中流以上に流されるマスコミやNGOの情報と現実は全く乖離しており、誘拐や暴力的な人身売買、薬物漬けのような形で、ここに縛りつけられ仕事を強要される少年は、Zにはいない。物理的な意味では、逃げようと思えば逃げられる環境に、少年らは置かれている。
不良化し派手な遊びを覚え、金ほしさから流れてくる子。親が貧困から、事実上売り渡すような形で送り出すケース。また親の暴力などから逃げて、家出し、流れてくるケース。また子ども自身が、家計を助けるため、出稼ぎのような形で働くケースなど事情はさまざま。
学校の長期休暇には街に子ども達がどっと増える。一日二日働いて、また来年という少年もいれば、ひと夏の莫大な稼ぎと夢のような浪費と遊興の味から、足抜けできなくなるケースもある。
現在の日本はやたら餓死者が出るほど貧しくはない。しかし、とくに都市部の児童養護施設は民間委託が多く、かつ監査は甘く、場所によっては大人の刑務所以下の収容所感覚で、子ども同士の陰湿ないじめはもちろん、大人からの暴力やレイプのリスクは高い。
経済力でも精神面でも、「まっとうな親」の元に生まれなかった子にとって、Zは時に甘い夢を見させてくれる天国であって、夢から醒めても地獄と言うほどの、最底辺の場所とは限らないのだ。
暴力的強制の児童売春は、大概もっと小規模にひそかに行われている。マンションの一室で、ニーズを考慮しても圧倒的にこういうパターンは女児の被害者が多いが、一人から一桁の子どもを監禁、軟禁し、休日や夜間は延々と客と仕事をさせられていたケースが、何度か摘発されている。こういう場合「管理人」もより凶悪な人間であることが多く、本人がまず子どもを暴力的に陵辱して、屈服させるのである。薬物も使われる。足の指を何本か切断され、走れなくされるとともに恐怖心を植え付けられた哀れな子どもも存在した。
供給源はこの場合も実親が多く、悪質な児童養護施設からの「横流し」、家出少年少女の誘拐、などが続く。
数年に一度、こうしたケースが摘発されると、Zの事実上の支配者(直接的には土地や店を持ち、警察や政治家などとかけひきできる立場の人間)らは憤り、ママさんらは不快感を顕わにし不安に陥る。Zの子ども達も、「かわいそうだね、ひどいね」という反応が多く、自分の立場とは別次元と認識している。
NGOや慈善家や金持ちのWASPや宗教家の一部もしくは大半には、理解力がないか、理解する気がないか、頭から事象を利用する気しかないため、こうした少年の街の大人達の反応を嘲笑・蔑視・攻撃し、子ども達をありがたくも憐れむのである。
話を戻すが、このように突然拉致監禁されてきたわけでなく、ここ独特のつらさに耐えられなければ街を抜け出す選択肢もある子らは、あらかじめこの街と仕事をある程度理解している。だがチビ玉は異なる。
ジョージはまだ彼の身の上をそう聞いていなかったが、父親と放浪しながら紙芝居などの大道芸をやって食いつないでいたというのだから、当然テレビも新聞も、不良化した中学生も友人も、彼には情報源がなにもない。自称十歳にジョージがかなり驚いたくらいで、体格はそれよりさらに二歳下に見える。第二次性徴など遙か遠く、精神も肉体も女性への性的関心にすら目覚めていまい。
「……男の人とチューとか、すんの?」
「うんまあ……」
安請け合いはまずかったのかもしれないが、いずれ知るしかない、やるしかないことなのだ。だから自分が一緒に行って……。
「とりあえず一文なしやろ。ここの人らかてタダでメシ食わしたり寝かしたりはできへんし、お医者さんにもお金払わな。ちっちゃいのにかわいそうやけど……」
チビ玉はソファに浅く座って、ちょっと足を跳ね上げる。
「バカにすんなよ! これでももう何年も、お父ちゃんと一緒に働いてきたんやから。学校とかで遊んでるボンボンとは違うねん」
「……わかったわかった」
俺は学校行きたかったな。行けなくしたママ、恨んだな。この子は何も恨んでないみたいだな。オヤジも大好きだったみたいだな。……ちょっと、うらやましいな。
「もしな、気持ち悪いとか痛いとか、きつかったらお客さんと違て俺に合図してくれたら、俺お客さんに交渉するから、あんまりなんも考えんと……」
「痛い?」
「……う、うん。いやまあ大丈夫と思うけど」
あの客が大丈夫かは正直わからないが、ジョージは多少腕っ節には自信があったし、ナイフもいつも持っている。首を絞めてくるような狂った客からは、実際に刃物を振るうかは別にして、ひっぱたいて逃げてもよいことになっている。
少年らは商品だから経営者も壊されては困る。働き手が大人の場合よりもさらに、恐怖やストレスを軽減した状態で仕事をさせられるようケアしたいというのは、動機は同情でも何でもない実益だが上の人間の偽らざる本音だ。
「ようするにエッチなことやねんな」
「……そやねん。女のかわりに男の子がええちゅう人が来るとこやから……」
「うん、わかった。がんばる」
逡巡するジョージの言葉を遮るようなチビ玉の早口。くりくりした大きな黒目が、ジョージを下から見つめた。
「…………」
「お父ちゃん紙芝居自分で作るねん。資料で、江戸時代とかの本が写真になったやつとか、持ったはったり、図書館で借りたりしたんやで」
「……?……」
「シュンガっていう昔のエロ本があるねん。それに男とお坊さんがエッチなことしてるやつとか、あるねんで」
「……マジで……?」
ジョージだって大人ではない。大して何も知らない。お坊さんが? 日本人ってそんな昔から変態だったのかとちょっと驚き、ちょっと自己嫌悪になる。
「ジョージみたいにかっこいい子は出てこうへんで。たいがい太って色が白くて長い髪後ろで結んだ感じで、お坊さんにおちんちんくわえてもらったりおしりに筆入れられたりしてるねん」
チビ玉の子ども声がどんどん大きくなっていて、ジョージはなぜが恥ずかしくて耳まで真っ赤になるほどかっかとしてきた。
「行こう」
「え?」
あんな話をここでこれ以上されたら動揺する。なぜか恥ずかしいし、絵で見たものを、言葉で聞いたことを、自分のからだで実際受け止めた時、この子がどう感じ、どう反応するのか、もう考えたくない。
「バイク乗せたる。乗りたいやろ?」
「うん」
「お金たくさんもらえるから、ちょっと風に当たってから、うまいもん食って、それから行こうな」
「うん!」
チビ玉ははね飛ぶように、ガムテープで補修したぼろソファから立ち上がる。
――――――――――――
何とかこの章ではエロシーンに持ち込もうと思ったんですが無理でしたw
よく考えればこの作品、「金と昌己」にも「SEX」シーンはないですし、コンセプトはエロよりドラマという我が侭仕様でしたので、ストーリーをわかりにくくしてまでカットバックでエロを挟むのはやめました。
ただこの「チビ玉とジョージ」に関しては少なくともこのロシア人のホテルと、序盤に出てきた石油成金とチビ玉の部分で濡れ場はあるんですけどね。自然に流します。
文章はこの「3」の倍くらい書けてて、それでも濡れ場にならないんで(笑) まずはアップ。
最近サイト工事や旧作の販売話ばかりでしたので、お楽しみいただければ幸いです。
「少年の街」既存の章を全てPCはフレーム版に、あと携帯への移植も済んだら、書けてる分、ブログアップ分を、再度推敲してサイト連載に移行します。
例のロシア人が泊まっているのは「ルミネス」という名のアメリカンスタイルのリゾートホテルだ。ただしなぜか、オーナーはイスラム系という不思議だ。
そこは普段、少年達をショートで買う男達がこそこそと泊まりこそこそと消えるホテルとは少し違う。
もっとも、十五歳以上の少年なら、地下駐車場からエレベーターに乗り、顧客の部屋に直行できる。そのことは、ホテルオーナーは知らないことになっている。警察機関とは、袖の下を握り合って話はつけてあるのだ。
ただ、チビ玉のように、十歳以下にしか見えない、身分証もないみすぼらしいみなりの少年、そしてそれを引率するのも、十五で通らないことはないが実際は十四くらいで、これも身分証のないジョージとあっては、これも効かない。
こういう場合、押しのきく、お得意さんの客だけが例外的なわがままを通すことができる。ホテルに一ヶ月以上何度も連続滞在している。その間あらゆる意味でZに金をばらまいている、おおむね街で無茶をせず地元の大人子どもに嫌われていない、など。
こうした客は、ほとんどあらゆるわがままがきく。チビ玉を部屋に入れるのも、例外的手法で、従業員用入り口、従業員用エレベーターを通り、それを案内する清掃員に、客からママに、ママからジョージへと預けられたチップを渡し、部屋にたどり着ける。
アメリカンスタイルのホテルは、重厚さや雰囲気に欠ける面はあるが、グレードの高いリゾートホテルなので、どこも清潔で明るい。
チビ玉の、場違いさへの戸惑い、不安、怯えが、ジョージには痛いほど伝わった。
†
「しごと……?」
眠い目をこすりながら自分を見上げる幼い少年から何となくふっと目をそらし、ジョージはかすかな胸の痛みを感じた。
Zに流れてくる少年達は、あらかじめ大概、「仕事」の内容を知っている。無論SEXそのものについての知識がおぼろげな段階だとそれなりだが、女性で言えばお尻を触られてなんぼ、キスされてなんぼの水商売の世界だということぐらいは、わかっているものだ。中学生くらいの年齢なら、すでに「仲間」が経験済みであったりで、仕事の中身の把握は、知識の上ではほぼ正確なものだ。ただ知識と実践、実際の《感覚》には相当なギャップがあり、最初の一回目で泣いて逃げ出す子も多い。逃げることが可能な子の場合はであるが。
ことに先進国の中流以上に流されるマスコミやNGOの情報と現実は全く乖離しており、誘拐や暴力的な人身売買、薬物漬けのような形で、ここに縛りつけられ仕事を強要される少年は、Zにはいない。物理的な意味では、逃げようと思えば逃げられる環境に、少年らは置かれている。
不良化し派手な遊びを覚え、金ほしさから流れてくる子。親が貧困から、事実上売り渡すような形で送り出すケース。また親の暴力などから逃げて、家出し、流れてくるケース。また子ども自身が、家計を助けるため、出稼ぎのような形で働くケースなど事情はさまざま。
学校の長期休暇には街に子ども達がどっと増える。一日二日働いて、また来年という少年もいれば、ひと夏の莫大な稼ぎと夢のような浪費と遊興の味から、足抜けできなくなるケースもある。
現在の日本はやたら餓死者が出るほど貧しくはない。しかし、とくに都市部の児童養護施設は民間委託が多く、かつ監査は甘く、場所によっては大人の刑務所以下の収容所感覚で、子ども同士の陰湿ないじめはもちろん、大人からの暴力やレイプのリスクは高い。
経済力でも精神面でも、「まっとうな親」の元に生まれなかった子にとって、Zは時に甘い夢を見させてくれる天国であって、夢から醒めても地獄と言うほどの、最底辺の場所とは限らないのだ。
暴力的強制の児童売春は、大概もっと小規模にひそかに行われている。マンションの一室で、ニーズを考慮しても圧倒的にこういうパターンは女児の被害者が多いが、一人から一桁の子どもを監禁、軟禁し、休日や夜間は延々と客と仕事をさせられていたケースが、何度か摘発されている。こういう場合「管理人」もより凶悪な人間であることが多く、本人がまず子どもを暴力的に陵辱して、屈服させるのである。薬物も使われる。足の指を何本か切断され、走れなくされるとともに恐怖心を植え付けられた哀れな子どもも存在した。
供給源はこの場合も実親が多く、悪質な児童養護施設からの「横流し」、家出少年少女の誘拐、などが続く。
数年に一度、こうしたケースが摘発されると、Zの事実上の支配者(直接的には土地や店を持ち、警察や政治家などとかけひきできる立場の人間)らは憤り、ママさんらは不快感を顕わにし不安に陥る。Zの子ども達も、「かわいそうだね、ひどいね」という反応が多く、自分の立場とは別次元と認識している。
NGOや慈善家や金持ちのWASPや宗教家の一部もしくは大半には、理解力がないか、理解する気がないか、頭から事象を利用する気しかないため、こうした少年の街の大人達の反応を嘲笑・蔑視・攻撃し、子ども達をありがたくも憐れむのである。
話を戻すが、このように突然拉致監禁されてきたわけでなく、ここ独特のつらさに耐えられなければ街を抜け出す選択肢もある子らは、あらかじめこの街と仕事をある程度理解している。だがチビ玉は異なる。
ジョージはまだ彼の身の上をそう聞いていなかったが、父親と放浪しながら紙芝居などの大道芸をやって食いつないでいたというのだから、当然テレビも新聞も、不良化した中学生も友人も、彼には情報源がなにもない。自称十歳にジョージがかなり驚いたくらいで、体格はそれよりさらに二歳下に見える。第二次性徴など遙か遠く、精神も肉体も女性への性的関心にすら目覚めていまい。
「……男の人とチューとか、すんの?」
「うんまあ……」
安請け合いはまずかったのかもしれないが、いずれ知るしかない、やるしかないことなのだ。だから自分が一緒に行って……。
「とりあえず一文なしやろ。ここの人らかてタダでメシ食わしたり寝かしたりはできへんし、お医者さんにもお金払わな。ちっちゃいのにかわいそうやけど……」
チビ玉はソファに浅く座って、ちょっと足を跳ね上げる。
「バカにすんなよ! これでももう何年も、お父ちゃんと一緒に働いてきたんやから。学校とかで遊んでるボンボンとは違うねん」
「……わかったわかった」
俺は学校行きたかったな。行けなくしたママ、恨んだな。この子は何も恨んでないみたいだな。オヤジも大好きだったみたいだな。……ちょっと、うらやましいな。
「もしな、気持ち悪いとか痛いとか、きつかったらお客さんと違て俺に合図してくれたら、俺お客さんに交渉するから、あんまりなんも考えんと……」
「痛い?」
「……う、うん。いやまあ大丈夫と思うけど」
あの客が大丈夫かは正直わからないが、ジョージは多少腕っ節には自信があったし、ナイフもいつも持っている。首を絞めてくるような狂った客からは、実際に刃物を振るうかは別にして、ひっぱたいて逃げてもよいことになっている。
少年らは商品だから経営者も壊されては困る。働き手が大人の場合よりもさらに、恐怖やストレスを軽減した状態で仕事をさせられるようケアしたいというのは、動機は同情でも何でもない実益だが上の人間の偽らざる本音だ。
「ようするにエッチなことやねんな」
「……そやねん。女のかわりに男の子がええちゅう人が来るとこやから……」
「うん、わかった。がんばる」
逡巡するジョージの言葉を遮るようなチビ玉の早口。くりくりした大きな黒目が、ジョージを下から見つめた。
「…………」
「お父ちゃん紙芝居自分で作るねん。資料で、江戸時代とかの本が写真になったやつとか、持ったはったり、図書館で借りたりしたんやで」
「……?……」
「シュンガっていう昔のエロ本があるねん。それに男とお坊さんがエッチなことしてるやつとか、あるねんで」
「……マジで……?」
ジョージだって大人ではない。大して何も知らない。お坊さんが? 日本人ってそんな昔から変態だったのかとちょっと驚き、ちょっと自己嫌悪になる。
「ジョージみたいにかっこいい子は出てこうへんで。たいがい太って色が白くて長い髪後ろで結んだ感じで、お坊さんにおちんちんくわえてもらったりおしりに筆入れられたりしてるねん」
チビ玉の子ども声がどんどん大きくなっていて、ジョージはなぜが恥ずかしくて耳まで真っ赤になるほどかっかとしてきた。
「行こう」
「え?」
あんな話をここでこれ以上されたら動揺する。なぜか恥ずかしいし、絵で見たものを、言葉で聞いたことを、自分のからだで実際受け止めた時、この子がどう感じ、どう反応するのか、もう考えたくない。
「バイク乗せたる。乗りたいやろ?」
「うん」
「お金たくさんもらえるから、ちょっと風に当たってから、うまいもん食って、それから行こうな」
「うん!」
チビ玉ははね飛ぶように、ガムテープで補修したぼろソファから立ち上がる。
――――――――――――
何とかこの章ではエロシーンに持ち込もうと思ったんですが無理でしたw
よく考えればこの作品、「金と昌己」にも「SEX」シーンはないですし、コンセプトはエロよりドラマという我が侭仕様でしたので、ストーリーをわかりにくくしてまでカットバックでエロを挟むのはやめました。
ただこの「チビ玉とジョージ」に関しては少なくともこのロシア人のホテルと、序盤に出てきた石油成金とチビ玉の部分で濡れ場はあるんですけどね。自然に流します。
文章はこの「3」の倍くらい書けてて、それでも濡れ場にならないんで(笑) まずはアップ。
最近サイト工事や旧作の販売話ばかりでしたので、お楽しみいただければ幸いです。
「少年の街」既存の章を全てPCはフレーム版に、あと携帯への移植も済んだら、書けてる分、ブログアップ分を、再度推敲してサイト連載に移行します。
■少年の街
2
「ええ!? あのチビに仕事させんのかよ!」
「しばらく置いとくんならそれしかないでしょ。帰るとこあるのあの子?」
細面で軽く金に染めた髪の、スリムなジーンズを穿いたジョージに答えるのは、平たく四角い顔のオープンビアバー「レオン」のママだ。ママといってももちろん男で、黒い、スパンコールのキラキラした服を着てオネエ言葉でしゃべるものの、顔は少々の薄化粧だけで完全に男だ。四十に届いていないが髪が少なめで額がやや広い。
源ちゃんママという本人が嫌いなやぼったい仇名がついていた。本名は関川源次といい、大工の棟梁のような男そのものの名前なのである。
この街で働くママの中ではわりと話がわかると少年達から思われてるが、客のいるバーでコップを割るとか、チップを一部隠す類をやらかすと、ヤクザめいた野太い声で怒鳴り、少年には相当なヤキが入るらしい。
「あそこにデカイのいるでしょ。露助だってさ。あの子見かけてオフしたいって」
ジョージはうつむいた。眉の太い、日本人としてはいわゆる濃いめの顔をしている。ボクサーのように引き締まった肉体込みで人気があったが、まだ魅力は衰えていないはずだったが、この街暮らしが長く、最近あきられてきてしまっていた。
「……小さすぎるやん。かわいそうやで。英語通じてもあいつが無理やろ。何されるかわからん」
「わたしからよく言っとくわよ」
ママはジョージの方を叩く。当のチビ玉は暗がりのボロソファでうたた寝していた。三日ほど前、金のOKが出てとりあえず「退院」し、ジョージたちのねぐらに加わっていた。チビ玉は壁際の隅にもたれて眠り、それをガードするように部屋側を向いてジョージが眠った。
「……な、俺と一緒に買わしてえな。そやないとあかんて押してみて」
ママはジョージをひそめた目で見る。ジョージが続けた。
「けっこう気に入ってこだわってんにゃろ? 金持ってたらOKしよるんちゃうん。俺の分全部渡すで」
ママは小さなため息をつく。
「あんたあの子の何なのよ。長生きできないわよ」
と言いながらも、ママは笑い、チビ玉と反対側の客用ソファで、カクテルを舐めていたロシア人の巨漢の男の方に歩いていく。
英語が通じるようだ。それだとジョージにも交渉ができる。それはだめ、それはOK、それは金上乗せ。ジョージはOKとかNOとか数字、時間だけでなく、ブロークンだが初歩的な英会話ができ他の子の紹介や客引きを自力でやってピンハネもしている。十七、八歳が多い、自分は売らずにそうしたことを軸にしのぐ兄貴分、ビッグブラザーという立場との境目にいた。
ママが戻ってきた。指はOKサインだ。
「OKよ。あんたもかなり見られてたわよ」
ニヤリとママが笑う。
「ただし朝まで。二人で一万円出すって」
「いちま……」
一晩ではあっても相場の倍か……。人気のある子ならあり得ない金額ではないが、とジョージの胸は高鳴った。
「あんたとチビちゃんと絡むの見たいとか言ってるわよ。ヘンタイねえ。だから時間欲しいって」
「……いややて……」
ジョージは赤面した。照れくさいのは本当だが実は嫌ではない。体力に勝り意思の通じにくい、時にはかなり狂った人間もいる客とSEXするよりは、よほど誤魔化しがきいて楽だ。
「あんたも慣れてるからわかると思うけど、うまく機嫌とればまだかなりチップ絞れるわよ。腕の見せ所よ」
「……わかった」
ジョージはうなずく。
時間は十時からと決まった。朝は適当だ。一万円だからきっちり時間では切れない。朝飯時だろう。巨漢のロシア人が眠っているチビ玉に軽くキスし、ジョージをハグし、笑み崩れた源ちゃんママの手を握ってチップを渡し、バイクタクシーで夕食を摂りに消えた。
†
「チビ、起きい」
「……うーん」
ベッドで悶える小さなからだ。
ジョージは冬場でもツナギで身をかためタイヤにスパイクを履きバイクを疾走させる。一人の時間。爆音と冷たい風、それが彼の小さな「あたたかく」幸せな時間だった。少年の街で暮らす子らは、心に溜まる澱を清める儀式を、それぞれに身につけていく。ゲーム、シンナー、ケンカ、いじめ、アクセサリーの買いあさり……。本質的な解決などなく、出口はどこにもないのだから、ひとときの儀式を、必要としていたのだ。
あの日、一息入れに寄ったコンビニのATMの前で、野良犬のように寝転んでいたチビ玉。
見過ごせなかった。頭や素足にまで雪が積もって、もう死んでいると一瞬思った。そばにしゃがみ込むと、弱々しく目が開いた。
「お父ちゃん……」
か細い、本当に蚊の鳴くような声は、そう聞こえた。
「お父ちゃん、どこや? おい! 大丈夫か!」
ジョージはチビ玉のからだの雪を払う。コンビニの中に引きずり込んだ。
「なんやねおい、変なの引っ張り込むなよ」
顔見知りの年配の店員だ。ビデオゲームのマリオブラザーズのキャラクターのような口ひげをした中年男。
「見てわからんのか死にかけてんにゃ! 金払うからタオルよこせ。ちょっとの間暖房あたらせろ!」
凄みと切羽詰まった調子のこもったジョージの言葉に、眠たげな店員も肩をすくめ、バスタオルを棚から引っぱって包装を破り取った。
ジョージはチビ玉のボロ切れのような着衣を剥ぎ裸にした。タオルでからだを拭く。幼いのでからだのラインは柔らかいが痩せている。特に手足が痛ましいほど細い。膝小僧はすり切れていた。タオルでからだを拭く。コンビニの通路で。客は誰もいない。
店員は子ども向けのシャツとパンツを棚から引っぱってジョージの横に無造作に置いた。
「おごりや」
「……ありがとう」
「上っ張りあるか?」
「俺の服の中に入れる」
「……このからだやったらつっこめるか」
店員は口ひげを撫でながら柔らかく笑った。
「病院か? 金なんかどうせないやろ?」
「金さん叩き起こす」
「あのヤクザ医者か。つかまる(見つかる)とええな」
「うん。ありがとう。シャツ代も今度払うから」
「ええて、それより急げ。お前の腹でも背中でも温めてやるのが一番ちゃうかその様子では」
「うん」
新しいシャツとパンツのチビ玉を抱いてジョージは小雪の舞う店外に出、ちょっと考えてチビ玉を腹に向かい合わせに抱きつかせるようにし、はだけた上着をかぶせチャックを七分ほど閉めた。
(よし、金さん頼むからいてくれよ……)
ジョージは単車を疾走させる。時速一三〇キロ。スパイクではこれでも限界を超えていた。
---------------------------
スクラッチ前に少しはサイトにも新味をってことで、試作品ですが「少年の街」新章です。でもエロにとどかねえw
二つの時間を行き来する構成を取るため、仕上げの時はかなり文章の入れ替えが出るかもしれませんね。エロシーンに早くたどりつきたい……w
■更新と修正
御堂の新章を携帯側にアップしています。それから先日Firefoxがらみで触れた、PC版御堂の目次画面のtable崩れですが、CSSとHTMLタグをいじくり倒して少なくともIEとFirefoxでの「崩れ」は解消できました。文字サイズや文字寄せが絶対に揃えられないところがあり、特にふりがなの位置など全く同じ見栄えにはなりませんが何とか。友人に協力していただいたところでは「Operaが一番きれいですね」とのことでした。お願いだからあれもこれもテストしなくていいようにしてw
2
「ええ!? あのチビに仕事させんのかよ!」
「しばらく置いとくんならそれしかないでしょ。帰るとこあるのあの子?」
細面で軽く金に染めた髪の、スリムなジーンズを穿いたジョージに答えるのは、平たく四角い顔のオープンビアバー「レオン」のママだ。ママといってももちろん男で、黒い、スパンコールのキラキラした服を着てオネエ言葉でしゃべるものの、顔は少々の薄化粧だけで完全に男だ。四十に届いていないが髪が少なめで額がやや広い。
源ちゃんママという本人が嫌いなやぼったい仇名がついていた。本名は関川源次といい、大工の棟梁のような男そのものの名前なのである。
この街で働くママの中ではわりと話がわかると少年達から思われてるが、客のいるバーでコップを割るとか、チップを一部隠す類をやらかすと、ヤクザめいた野太い声で怒鳴り、少年には相当なヤキが入るらしい。
「あそこにデカイのいるでしょ。露助だってさ。あの子見かけてオフしたいって」
ジョージはうつむいた。眉の太い、日本人としてはいわゆる濃いめの顔をしている。ボクサーのように引き締まった肉体込みで人気があったが、まだ魅力は衰えていないはずだったが、この街暮らしが長く、最近あきられてきてしまっていた。
「……小さすぎるやん。かわいそうやで。英語通じてもあいつが無理やろ。何されるかわからん」
「わたしからよく言っとくわよ」
ママはジョージの方を叩く。当のチビ玉は暗がりのボロソファでうたた寝していた。三日ほど前、金のOKが出てとりあえず「退院」し、ジョージたちのねぐらに加わっていた。チビ玉は壁際の隅にもたれて眠り、それをガードするように部屋側を向いてジョージが眠った。
「……な、俺と一緒に買わしてえな。そやないとあかんて押してみて」
ママはジョージをひそめた目で見る。ジョージが続けた。
「けっこう気に入ってこだわってんにゃろ? 金持ってたらOKしよるんちゃうん。俺の分全部渡すで」
ママは小さなため息をつく。
「あんたあの子の何なのよ。長生きできないわよ」
と言いながらも、ママは笑い、チビ玉と反対側の客用ソファで、カクテルを舐めていたロシア人の巨漢の男の方に歩いていく。
英語が通じるようだ。それだとジョージにも交渉ができる。それはだめ、それはOK、それは金上乗せ。ジョージはOKとかNOとか数字、時間だけでなく、ブロークンだが初歩的な英会話ができ他の子の紹介や客引きを自力でやってピンハネもしている。十七、八歳が多い、自分は売らずにそうしたことを軸にしのぐ兄貴分、ビッグブラザーという立場との境目にいた。
ママが戻ってきた。指はOKサインだ。
「OKよ。あんたもかなり見られてたわよ」
ニヤリとママが笑う。
「ただし朝まで。二人で一万円出すって」
「いちま……」
一晩ではあっても相場の倍か……。人気のある子ならあり得ない金額ではないが、とジョージの胸は高鳴った。
「あんたとチビちゃんと絡むの見たいとか言ってるわよ。ヘンタイねえ。だから時間欲しいって」
「……いややて……」
ジョージは赤面した。照れくさいのは本当だが実は嫌ではない。体力に勝り意思の通じにくい、時にはかなり狂った人間もいる客とSEXするよりは、よほど誤魔化しがきいて楽だ。
「あんたも慣れてるからわかると思うけど、うまく機嫌とればまだかなりチップ絞れるわよ。腕の見せ所よ」
「……わかった」
ジョージはうなずく。
時間は十時からと決まった。朝は適当だ。一万円だからきっちり時間では切れない。朝飯時だろう。巨漢のロシア人が眠っているチビ玉に軽くキスし、ジョージをハグし、笑み崩れた源ちゃんママの手を握ってチップを渡し、バイクタクシーで夕食を摂りに消えた。
†
「チビ、起きい」
「……うーん」
ベッドで悶える小さなからだ。
ジョージは冬場でもツナギで身をかためタイヤにスパイクを履きバイクを疾走させる。一人の時間。爆音と冷たい風、それが彼の小さな「あたたかく」幸せな時間だった。少年の街で暮らす子らは、心に溜まる澱を清める儀式を、それぞれに身につけていく。ゲーム、シンナー、ケンカ、いじめ、アクセサリーの買いあさり……。本質的な解決などなく、出口はどこにもないのだから、ひとときの儀式を、必要としていたのだ。
あの日、一息入れに寄ったコンビニのATMの前で、野良犬のように寝転んでいたチビ玉。
見過ごせなかった。頭や素足にまで雪が積もって、もう死んでいると一瞬思った。そばにしゃがみ込むと、弱々しく目が開いた。
「お父ちゃん……」
か細い、本当に蚊の鳴くような声は、そう聞こえた。
「お父ちゃん、どこや? おい! 大丈夫か!」
ジョージはチビ玉のからだの雪を払う。コンビニの中に引きずり込んだ。
「なんやねおい、変なの引っ張り込むなよ」
顔見知りの年配の店員だ。ビデオゲームのマリオブラザーズのキャラクターのような口ひげをした中年男。
「見てわからんのか死にかけてんにゃ! 金払うからタオルよこせ。ちょっとの間暖房あたらせろ!」
凄みと切羽詰まった調子のこもったジョージの言葉に、眠たげな店員も肩をすくめ、バスタオルを棚から引っぱって包装を破り取った。
ジョージはチビ玉のボロ切れのような着衣を剥ぎ裸にした。タオルでからだを拭く。幼いのでからだのラインは柔らかいが痩せている。特に手足が痛ましいほど細い。膝小僧はすり切れていた。タオルでからだを拭く。コンビニの通路で。客は誰もいない。
店員は子ども向けのシャツとパンツを棚から引っぱってジョージの横に無造作に置いた。
「おごりや」
「……ありがとう」
「上っ張りあるか?」
「俺の服の中に入れる」
「……このからだやったらつっこめるか」
店員は口ひげを撫でながら柔らかく笑った。
「病院か? 金なんかどうせないやろ?」
「金さん叩き起こす」
「あのヤクザ医者か。つかまる(見つかる)とええな」
「うん。ありがとう。シャツ代も今度払うから」
「ええて、それより急げ。お前の腹でも背中でも温めてやるのが一番ちゃうかその様子では」
「うん」
新しいシャツとパンツのチビ玉を抱いてジョージは小雪の舞う店外に出、ちょっと考えてチビ玉を腹に向かい合わせに抱きつかせるようにし、はだけた上着をかぶせチャックを七分ほど閉めた。
(よし、金さん頼むからいてくれよ……)
ジョージは単車を疾走させる。時速一三〇キロ。スパイクではこれでも限界を超えていた。
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スクラッチ前に少しはサイトにも新味をってことで、試作品ですが「少年の街」新章です。でもエロにとどかねえw
二つの時間を行き来する構成を取るため、仕上げの時はかなり文章の入れ替えが出るかもしれませんね。エロシーンに早くたどりつきたい……w
■更新と修正
御堂の新章を携帯側にアップしています。それから先日Firefoxがらみで触れた、PC版御堂の目次画面のtable崩れですが、CSSとHTMLタグをいじくり倒して少なくともIEとFirefoxでの「崩れ」は解消できました。文字サイズや文字寄せが絶対に揃えられないところがあり、特にふりがなの位置など全く同じ見栄えにはなりませんが何とか。友人に協力していただいたところでは「Operaが一番きれいですね」とのことでした。お願いだからあれもこれもテストしなくていいようにしてw